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OPFパッケージファイル生成アプリ(緊デジ用)を公開します

2012/10/25

uuid自動生成、kindle用パラメータ入力に対応した新バージョン『電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0』をリリースいたしました。どうぞご利用ください。

 EPUB3をゼロからハンドコーディングで制作するにあたって比較的敷居が高いと思われるのが、パッケージファイル(opfファイル)の作成です。すでにご存じの方も多いかと思いますが、EPUB3はおおざっぱに言ってWebの標準技術であるXHTML(HTML5)とCSSを用いて制作したドキュメントをZIP形式で圧縮したものですが、含まれる画像やXHTML文書などの各種ファイルはパッケージファイルに所定の形式で記載しておく必要があります。また、ページの並び順や綴じ方向、出版社名や著者名などの各種書誌情報も全てパッケージファイルに記述しておかなければなりません。

 先日発表された電書協EPUB3制作ガイドでもこのパッケージファイルの記述方法はきちんと規定されており、このガイドの仕様を採用した緊デジでのリフロー型EPUB3制作でも、当然きっちりと規定通りにパッケージファイルを記述する必要があると思われます。これは慣れない人間にとってはXHTMLやCSSの記述以上に取っつきにくい作業になりそうで、電書協EPUB3制作ガイドで書き換えの必要な箇所を色分けして指示しているとはいえ、入力時の間違いが多発しそうな感じはあります。
 私の所属している会社でもこれは当然他人事ではありませんので、間違いのない記述を行うために専用の入力フォームアプリを制作し、対処することにしました。こちらを今回公開させていただきますので、制作時の役に立てていただければ幸いです。

仕様・ダウンロード

アプリ名:OPFファイル生成(緊デジ用)
対応環境:Mac OS 10.4〜10.8
動作チェック済環境:Mac OS 10.5(PowerPC)/Mac OS 10.6/Mac OS 10.7

入力画面
※ビルド自体はMac OS 10.4までをターゲットにIntel/PowerPC両環境を対象としたユニバーサルバイナリ対応で行っていますが、当方にテスト環境がないためOS 10.4での起動チェックはできていません。おそらくOSにプリインストールされているperlのバージョンにも依存します。

※Mac OS 10.8でのチェックも出来ていないのですが、10.8には「Gatekeeper」という非登録デベロッパのアプリを実行出来なくするセキュリティ機能が搭載されているため、おそらくデフォルトの設定では起動できません。「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」で「Gatekeeper」の設定をオフにすれば起動できるかと思います。将来的には対応を検討中です。

※こちらのアプリは、電書協EPUB3制作ガイド_ver1.1及び、緊デジテンプレート(2012年10月22日発表版)の仕様に沿って制作されたリフロー型EPUB3コンテンツ専用のOPFパッケージファイル作成アプリです。他の形式のEPUB3コンテンツ制作に使用していただくことは可能ですが、ファイル構成、パス指定などは異なっている可能性があり、それぞれのケースにあわせて書き換える必要があります。あらかじめご了承ください。また、こちらのアプリを利用したことによって生じた損害等に関しまして、私として一切の責任は負いかねますので、あくまで自己責任でご利用ください。

>>OPFファイル生成(緊デジ用)ver 1.2.3 ダウンロードはこちら

※ダウンロード先を私の所属する会社のホームページ内ダウンロードコーナーに移動しました。内容の改訂等は行っていません。

>>電書協EPUB3用OPFファイル生成ver 2.0 ダウンロードはこちら

※uuid自動生成、kindle用パラメータ入力(kindlegen2.8にて検証済)に対応した新バージョンです。

使い方

page-spread-left指定

page-spread-left指定

 画面上の各項目を入力もしくは選択し、「OPF生成」のボタンを押せばファイルの出力先を尋ねるダイアログが出ますので、保存先を指定すればそちらに「standard.opf」の名称でOPFファイルが出力されます。簡単です。なお、画像フォルダ及びXHTML文書の収納フォルダはフォルダ名を取得してパスに組み込みますので、実際にEPUB内に収納するものと同じフォルダを指定してください。CSS及びナビゲーション文書は電書協EPUB3ガイドの仕様に従ってファイル名・パス共に決め打ちで出力します。EPUB3圧縮時には、規定の場所にそれぞれのファイルを配置しておくようにしてください。

 出力後、OPFファイルをテキストエディタで開き、以下のポイントをチェック・修正してください。

  1. 改行コードは「CR(Mac)」で出力されます。電書協EPUB3制作ガイドでは、パッケージ内の各文書の改行コードを統一することを推奨していますので、必要であれば修正してください。
  2. 全てのXHTMLドキュメントを見開き時片ページ始まり指定で出力します。出力された「standard.opf」ファイルの「<spine>」指定内、各「<itemref〜」行末尾の「properties="page-spread-left"」(左綴じではpage-spread-right)記述部分がそれに相当します。各XHTMLドキュメントの内容を確認し、片ページ始まりが必要なければこの部分の記述を削除してください。
  3. 「<itemref〜」行のファイルの並び順は、EPUB文書としてのページングの順番に相当します。ファイルの並び順を確認し、必要であれば入れ替えを行って下さい。
  4. 緊デジでのコンテンツ制作以外の目的でこちらのツールを利用する場合、JP-eコードに関する部分の記述をuuid等に差し替える必要があります。JP-eコードはそれぞれの電子書籍に対して与えられるユニーク値ですので、JP-eコードを適当に入力した電子書籍を配布することは絶対に避けてください。uuidの生成に関してはこちらが参考になります。また、ヘッダ行にもJP-eコードに関する記述がありますので、記述を変える必要があります。電書協ガイドに沿ったコンテンツ制作の場合は、電書協ガイドのサンプルのヘッダ部分の記述を引き写せばOKです。
    →uuid自動生成に対応した「電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0」をご利用ください。

 なお、電書協EPUB3制作ガイドでは、カバー、本文など各文書に用いるXHTMLのファイル名をきちんと規定しています。電書協EPUB3制作ガイドおよび緊デジテンプレートの記述の規則に従ってファイル名が付けられていた場合、こちらのアプリが自動で望ましいと思われる順番に文書を並び替えて出力します。規則から外れていたファイルについては、「<itemref〜」行末尾にシステムのソート順に従って記述されます。外字ファイルなどの命名規則もこれと同様です(緊デジテンプレートの記述規則に従います)。

 電書協EPUB3制作ガイド/緊デジテンプレートのXHTMLファイル名命名規則は現状、以下の通りです。

  • カバー:p-cover.xhtml
  • 前付け:p-fmatter-00x.xhtml(連番) ※1
  • 本扉:p-titlepage.xhtml ※1
  • 電子化注意書き(底本組方向の記述):p-caution.xhtml ※1
  • 目次:p-toc.xhtml ※1
  • 本文:p-00x.xhtml(連番)
  • 底本奥付:p-colophon.xhtml
  • 広告:p-ad-00x.xhtml(連番)
  • 電子化奥付:p-credit.xhtml
  • 白紙ページ:p-white.xhtml(連番になるパターンもあり) ※2

また、特にファイル名を規定しているイメージファイルは以下の通りです。

  • カバー:cover.jpg
  • 底本奥付:original_credit.jpg ※1
  • 外字:cid-xxxxx.png(Adobe-Japan 1のCIDコード番号を指定)※1
  • 底本奥付:i-colophon.jpg ※2
  • 電子化奥付:i-credit ※2
  • 本文ページ:i-xxx.jpg(連番) ※2
  • 白紙ページ:i-white.jpg(連番になるパターンもあり) ※2

※1 リフロー型のみ  ※2 フィックス型のみ

 緊デジでのリフロー型EPUB制作では、本文用のXHTMLを作り、画像を整えてOPFパッケージファイルを生成するところまで出来てしまえば、あとはテンプレとして支給されるCSSを割り当て、カバー、目次、クレジット等のテンプレHTMLを書き換える程度の簡単な作業でEPUB3は作れます。

(2012.10.25)

 @lost_and_foundさんのご指摘をいただき、「役割(role)」のドロップダウン項目リスト内容及びヘルプ文書を修正しました。

(2012.10.25追記)

 左綴じコンテンツ出力時のパラメータが「ltl」となってしまっていたのを「ltr」に修正しました。また、image/xhtmlフォルダ未選択時のエラーメッセージを追加しました。

(2012.10.26追記)

 緊デジフィックス型EPUB3用のOPFファイル出力に対応しました。「EPUB3のタイプ」トグルボタンでリフロー/フィックスの選択ができます。

(2012.11.1追記)

 緊デジリフロー型EPUB用の目次用xhtmlファイル「p-toc.xhtml」の同時生成に対応しました。事前に各見出し要素にid属性を付加しておく必要がありますが、目次ファイルを自動生成します。

(2012.11.5追記)

 タイトル名・著者名等に半角スペースが含まれていた場合に正常にファイルが出力されない問題、目次ファイルが正常に出力されない場合があった問題などに対処しました。

(2012.11.19追記)

 章扉が画像のパターンに対応しました。

(2012.11.26追記)

 「電書協EPUB 3 制作ガイド(Ver.1.1.1)」の公開に伴い、緊デジテンプレートも修正されましたので、これに対応する修正を行いました。メニュー選択でver1.1.1とver1.1を選択して出力できます。他、タイトル名に半角スペースが含まれていた場合に正常にファイルが出力されない問題の修正を行いました。
 なお、この更新に伴う修正点は、「ebpaj:guide-version」のバージョン番号表記(1.1→1.1.1)、フィックス型出力時のfallback記述の削除の2点です。

(2012.12.17追記)

ダウンロード先を私の所属する会社のホームページ内ダウンロードコーナーに移動しました。内容の改訂等は行っていません。

(2012.12.25追記)

ファイルIDのuuid自動生成対応、Amazon kindle用mobiファイルの自動生成に新たに対応した新バージョン「電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0」を公開いたしました。

(2013.4.4追記)

「電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0」のメニュー及びアラートの「〜読み(カタカナ)」を、「〜カナ(整列用)」のような表記に修正しました。機能的な変更点はありません。変更を適用した最新バージョンは2.0.1です。

(2013.5.9追記)

「電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0」で、リフロー型、Kindle対応の場合に出力されるOPFファイル中文内の表紙ファイルのリンク先を「cover.jpg」から「p-cover.xhtml」に修正しました。これはEpubCheck3.0.1でエラーが出力されることに対応したものです。変更を適用した最新バージョンは2.0.2です。

(2013.6.27追記)

「電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0」で、フィックス型、Kindle対応の場合のオプション「画面ロック方向を指定」で「縦長画面」を選んだ際に設定が反映されなかった問題を修正しました。変更を適用した最新バージョンは2.0.3です。

(2013.7.8追記)

「電書協EPUB3用OPFファイル生成 2.0」で、GIF形式のファイルの処理に対応いたしました。変更を適用した最新バージョンは2.0.4です。

(2013.8.22追記)

IDPFのバリデータに叱られてみた

2012/10/16

 「バリデータ」。DTP畑の方には言葉に聞き覚えのない方がおられるかも知れませんが、これは納品データが一定の仕様に沿っているかをチェックする整合性チェックプログラムのことです。IDPFは制作したEPUB3が仕様に沿っているかをチェックするためのバリデータを提供しており、無償で誰でも使うことができます。

 紙の印刷物の場合には、最終成果物はあくまで出力された紙であり、同じ出力結果が得られるのであればデータはどのように作ろうが自由でした。しかし、電子書籍の場合は事情が異なり、最終成果物はデータそのものであり、それはきちんとした仕様に沿って作られたものでなければなりません。特にEPUB3の場合はXMDFやドットブックよりも閲覧環境が多岐にわたるため、仕様に沿ってデータを作ることは重要です。従って、納品前に最低限「ちゃんとIDPFのバリデータを通るかどうかをチェックする」ことが必須になってくるわけです。先日発表された『電書協EPUB3制作ガイド』にも「最新版の epubcheck でエラーの出ないデータを制作すること」との記述があり、これは今後ごく当然の要求としてデータの納品時に求められてくるものと思われます。

 IDPFのバリデータは、EPUB3の容量が10MB以下であればこちらでwebサービス版を利用できますし、こちらから最新版Epubcheckをダウンロードすれば大容量のEPUBをチェックすることも可能です。ただ、こちらのツールはコマンドラインから利用するCUIのツールですので、コマンドラインツールに慣れていない方には少々敷居の高い面があることは確かです。そういった方には、Mac環境で利用できるこちらのGUIアプリケーション「EPUB Checker」をおすすめしておきます。内部的にIDPFのバリデータを利用しており、簡単なドラッグ&ドロップ操作でEPUBファイルをチェックすることができます。残念ながらWindows環境向けにはまだこれといったGUIバリデートチェックツールはなさそうで、早期の登場が望まれるところです。

 さて、今回は、実際にEPUB3を制作し、バリデートチェックをする際に私が遭遇したさまざまなエラーメッセージと、それぞれのエラーへの対処方法について書いてみます(画面はwebサービス版のものです)。正しいEPUBデータ制作の一助としていただければ幸いです。

パターン1 XHTML内「<meta>」行のエラー

XHTML内「meta」行のエラー 「File」はEPUB3パッケージ内ファイルのうち、問題のあったファイルを差しています。「Line」は問題のあった行で、「Message」はエラー内容です。正規表現を用いて書かれているので若干わかりにくいですが、この場合は、「cover.xhtml」ファイル内5行目の「<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=utf-8" />」のうち、「http-equiv」の属性値が不正なので修正せよと言われています。これはJBasic08の公式サンプルをそのまま使用した場合に遭遇するエラーです。
 エラー内容をそのまま適用すれば、「Default-Style」もしくは「Refresh」に修正することになりますが、最近のサンプルではこの行は「<meta charset="UTF-8" />」となっているものを多く見かけますので(電書協ガイドもこの表記)、そうした表記に変更する形で良いと思われます。また、この行そのものを記述しなくてもそう問題はないようです。

パターン2 「navigation.xhtml」内「nav.css」のリンクエラー

「navigation.xhtml」内「nav.css」のリンクエラー オーサリングツールとしてFUSEeβを使用している時に良く遭遇するエラーです。目次ファイル「navigation.xhtml」内にスタイルシート「nav.css」へのリンクが記載されているのに、実際にはファイルが存在しないことによりエラーが出ています。これはFUSEeβのデフォルト設定のため、頻繁にこのエラーに遭遇します。
 一度EPUBパッケージを解凍して「navigation.xhtml」内の「nav.css」へのリンク行を削除するか、あるいは内容は空でも構わないので「nav.css」を作成してFUSEeβで再度EPUB3ファイルを書き出せばこのエラーは消えます。

パターン3 空の「images」フォルダがある

空の「images」フォルダがある 電書協EPUB3ガイドの仕様では、画像を収納するフォルダ名は「image」です。しかしFUSEeβの標準仕様では画像フォルダ名は「images」で、FUSEeβ内で画像フォルダ名を「image」に変更することはできますが、何故か書き出し時に空の「images」も書き出され、このエラーが出ます。
 一度EPUBパッケージを解凍し、空の「images」フォルダを削除することでエラーは消えます。

パターン4 目次ファイル内に「<ol>」タグが連続で記述されている

目次ファイル内に「ol」タグが連続で記述されている 目次ファイル内に「<ol>」タグが連続で記述されているとこのエラーが出ます。FUSEeβの環境設定の「カバー・目次」の項目で、「<h1>〜<h3>タグを目次に含める」(目次に含めるタグ範囲は任意選択可能)の項目をオンにしていると、目次ファイル内に<ol>タグが連続する形でデータが書き出され、このエラーが出るようです。
 一度EPUBパッケージを解凍し、目次ファイル内の<ol>タグのうち内側のものを消すかコメントアウトすればこのエラーは消えます。

パターン5 パッケージ内にOPFファイルに記述されていない画像がある

パッケージ内にOPFファイルに記述されていない画像がある 画像フォルダ内にOPFパッケージファイルに記述されていない画像ファイルがある場合のエラーメッセージです。FUSEeβなどのツールを使用しているとOPFファイルへのファイル名の自動登録を行ってくれるため、このエラーに遭遇することはありませんが、ハンドコーディングでEPUB3を作成している場合などに、OPFパッケージファイルに画像ファイル名を記述し忘れるとこのエラーに遭遇します。適正にパッケージファイルへの記述を行えばエラーは消えます。

パターン6 パッケージ内にOPFファイルに記述されている画像がない

パッケージ内にOPFファイルに記述されている画像がない パターン5の逆で、パッケージファイルには画像ファイル名の記述があるのに実際にはファイルがない場合です。画像ファイルを入れ直す、(必要なければ)OPFファイル内の画像ファイルの記述を削除するなどの操作をすることでエラーは消えます。

パターン7 パッケージ内にファイル「.DS_Store」が存在する

パッケージ内にファイル「.DS_Store」が存在する Macがアイコンの配置などを記録している不可視の設定ファイル「.DS_Store」がフォルダ内に存在する場合のエラーです。これは不可視ファイルですので通常Macでは見えません。ただし実際には存在するためバリデート時にエラーになってしまいます。「Ds Store Remover」などのツールを使うことで除去できます。

パターン8 パッケージ内にファイル「iTunesMetadata.plist」が存在する

パッケージ内にファイル「iTunesMetadata.plist」が存在する 校正などの目的でiBooksなどのiOS内アプリにデータをコピーする際に、iTunesの同期機能を使うとパッケージ内にメタデータの管理ファイルを作成されてしまい、エラーが出ます。一度EPUBパッケージを解凍し、「iTunesMetadata.plist」ファイルを削除することでエラーは消えます。EPUB3ファイルの校正にiPad等を用いる際には、クラウドサービス「DropBox」経由でファイルを転送すると、この問題は起きませんので、そちらの方法をおすすめしておきます。

バリデータ通過画面

バリデータ通過画面

 これらのエラーを全て解消し、IDPFのバリデータをクリアすると「Congratulations!〜」と画面に表示されます。バリデータではきちんとCSSが適用されているか、XHTMLの表記が適正かといった部分まではチェックしてくれませんのでそうした校正は別立てで行う必要は当然ありますが、とりあえずはこれで最低限の「エラーを引き起こさないファイル」になったと言えるでしょう。

 なお、緊デジでEPUB3を制作する際に出てくるさまざまな問題を制作者同士の情報交換である程度解決するために、情報交換wiki「緊デジWiki」を先日公開しました。ご利用いただければ幸いです。

(2012.10.16)

「電書ちゃんねる」に、epubcheckに関する記事が掲載されたようです。「エラーメッセージ一覧日本語訳」はとても参考になるありがたい資料ですのでぜひ参照することをおすすめします。

(2013.5.23追記)

固定レイアウト/リフロー混在EPUB3を作ってみた

2012/08/21

 先日のJEPAのセミナーでもEPUB3の固定レイアウトについての話が出ていましたが、koboも発売になり、Readiumも出たことでEPUB3のリファレンス環境もほぼ整ってきた感がありますので、このあたりを参考に技術習得も兼ねてEPUB3のサンプルづくりをしてみました。
 今回はEPUB3固定レイアウト(EPUB3 Fixed Layout)にチャレンジです。とは言っても私の会社で作るようなコンテンツでは、全ページを雑誌的な固定レイアウトで制作するニーズはあまり無さそうですので、今回はカバーとタイトルおよび1ページ大の画像ページ「だけ」を固定レイアウト指定してみました。以下、おおざっぱな制作フローです。EPUB制作の参考にしていただければ幸いです。なにぶんまだ手さぐりもいいところですので、各箇所に間違った記述もあるかも知れませんがご容赦ください。と言いますかむしろツッコミお願いいたします。

1 InDesignからXMLを書き出し、XHTMLに変換

 今回のサンプルは青空文庫にもラインナップされている、宮武外骨「一円本流行の害毒と其裏面談」です。なかなかぶっとんだ内容で愉快です。詳しい内容の紹介は文末で。XHTML版もあったのですが、タグの付け直し作業が面倒そうだったのと、それを使うと練習にならないので、テキストファイル版を入手してInDesignのドキュメントに流し込み、こちらの手順でEPUB3用XHTMLデータを作成しました※1

2 FuseeβにXHTMLデータを流し込んでとりあえずパッケージ化

固定レイアウトEPUB3として書き出す

固定レイアウトEPUB3として書き出す

 作成したXHTMLデータおよび画像類をFuseeβに取り込み、EPUB3パッケージを書き出します。CSS(カスケーディングスタイルシート)等の設定は必要ですが、細かいパラメータは後から確認しながら追い込んだ方が効率が良いので、ここではとりあえずCSSのファイル登録、画像の登録、XHTMLデータ内へのCSSのリンクの登録などの形をおおざっぱに整え、パッケージとして書き出してしまいます。固定レイアウトもFuseeβからの書き出し時に指定できるのですが、これは全ページを固定レイアウトのEPUBとするための指定なので、特定ページだけを固定レイアウトにするためには後工程でソースの書き換えが必要になります。今回はひとまず、kobo用に縦800px、横600pxの全ページ固定レイアウトEPUB3ファイルとして書き出しました。

3 拡張子をEPUB→ZIPに変更してパッケージを解凍

 作成したファイルの拡張子をEPUB→ZIPに変更し、パッケージを一度解凍します。これにより、XHTMLなど各ファイルの修正、CSSの記述・修正が行えるようになります。

4 リフローページのXHTMLの修正

リフローページのviewport指定を削除

リフローページのviewport指定を削除

 OEBPS/text内にあるXHTMLファイルの中で、リフロー表示させるXHTMLファイルをテキストエディタで開き、ヘッダ部分の「<meta name="viewport"〜」の行を削除します(Fuseeが自動挿入する固定レイアウト用viewport指定です)。

5 content.opfの修正

content.opfを修正(1)

content.opfを修正(1)

 パッケージファイル「content.opf」をテキストエディタで開き、<meta propery="rendition:layout">pre-pagenated</meta>の行の「pre-pagenated」「reflowable」(ドキュメント基本特性を固定レイアウト→リフロー)に、<meta propery="rendition:orientation">auto</meta>の行の「auto」「portrait」(デバイスの向きを縦向きで指定)に修正しました。これらはFuseeが自動挿入する固定レイアウト指定プロパティですが、今回は特定ページのみ固定レイアウト指定しますので、修正しています。

content.opfを修正(2)

content.opfを修正(2)

 さらに、固定レイアウトを指定するXHTMLのspine指定に「properties=<rendition:layout〜」の部分を追記します。詳しいパラメータ等についてはこちらを参考にしました。この修正により、指定ページのみが固定レイアウトに設定されます。

6 CSSの記述・修正

 CSSの調整を行います。今回は固定レイアウト/リフロー混在のドキュメントですので、CSSファイルもそれぞれ別ファイルに分けています。CSSの設定に関しては、フリーで入手できる各種EPUBドキュメントや、公式サンプルドキュメントを参考にしました。固定レイアウトのCSS指定方法に関しては、こちらのサンプルドキュメントを参考にしています。今回、カバーページはSVGの固定レイアウト、タイトルページは固定レイアウトを用いてテキストブロックを左右中央に表示、1ページ大の画像ページは同じく固定レイアウトを用いて左右中央に画像を表示させることとしました。
 なお、CSS調整時の簡易画面確認は、XHTMLファイルをSafariChrome等のブラウザに放り込んで行っています。

7 カバーページにSVGデータをコピー&ペースト

SVGデータをコピー&ペースト

SVGデータをコピー&ペースト

 カバーページは全てSVGを用いた固定レイアウトページですので、Illustratorを用いて作成したカバー画像データをSVG形式で保存し、テキストエディタで開いて<svg>〜</svg>の部分をコピーし、カバー用のXHTMLファイルの<section>〜</section>の部分にペーストします。なお、Illustrator側でも指定ピクセル数サイズのファイルとして画像を作成しておく必要があります。
 SVGを用いた固定レイアウト指定の方法としてこの他に

1 opfファイル内でXHTMLファイルではなくSVG画像ファイルを直接指定する
2 通常の画像同様にEPUBパッケージ内のSVGファイルを指定する

 といったような方法もあるようなのですが、1はこの方法で作ったEPUB3ファイルを開こうとした際に、EPUBビューア「Murasaki」が強制終了してしまい、どうもまだ対応しているビューアが少ないようだとの話もありましたので断念しました。2はおそらく無難にやるならこちらの方がベターでしょう。少なくとも今回のようにカバー画像を普通に表示させたいだけであれば、わざわざXHTMLデータ内にソースとしてSVGを記述する必要性はありません(そもそもSVGである必要もないでしょう)。
 ただ、XHTMLデータ内に画像のデータをテキストとして記述できると言うことは、javascript等を用いて動的にパラメータを書き換えられるということを意味しますので、使い方次第では面白そうです。

8 EPUB再圧縮、kobo/Readiumで確認

Readiumでコンテンツを確認

Readiumでコンテンツを確認

 ひととおりの編集作業が済んだら、展開したドキュメントを再圧縮します。EPUB用の圧縮ではmimetypeファイルの圧縮率を0%にしなければならないのでちょっとだけ面倒です。今回私はこのあたりの情報や、EPUB 3 スタンダード・デザインガイドの情報を参考にMac OS X付属のターミナルで圧縮しました(スクリプト作りましたよ、ええ)。上記参考ページで紹介されている「ePub Packager」などの導入を考えてみても良いと思います。
 圧縮したEPUB3データをkobo/Readiumで表示確認し(koboでの確認時にはファイル名の拡張子を.epub→.kepub.epubに変えることでACCESSの日本語用レンダリングエンジンで確認できます)、おかしな箇所があれば元ファイルを修正して再圧縮を繰り返し、完成させます。
 なお、テスト途中でkoboの挙動がおかしくなったら、一度ファイルを捨てて空の状態で再認識させた上で再度ファイルをコピーすれば直ることが多いです。それでもダメな場合やそもそも画面がフリーズして帰ってこない場合は裏面の穴にクリップの先端を突っ込んでリセットしましょう。
 また、まだβ版ですので対応していないフィーチャーなどがあり、エラーが出ますが、IDPFのEPUB Varidatorもファイルチェックの役に立ちます。

 最後に今回のサンプル、宮武外骨「一円本流行の害毒と其裏面談」についてちょっとだけ。「円本」とは、大正年間末、関東大震災後に販売が始まった廉価な予約販売全集本のことで、一冊の価格が1円、これはそれ以前の本に比べて大幅に安価な値付けだったようです。いささかブームになりすぎた感のあったこの「円本」に対して、出版人としての立場から宮武外骨がもの申しているのがこのドキュメントになります。この外骨先生、自ら役所に掛け合って本名を「外骨」にしたという逸話のある相当にアクの強い人物だったらしく、特に官僚や政治家に対して幾度となく権力批判を行って投獄発禁処分を繰り返した反骨のジャーナリストです。この「一円本流行の害毒と其裏面談」でもそのアクの強さは如何なく発揮され、著者、版元、読者とほぼ全方向に向けてケンカを売りまくっています。この人が近くにいたら私はきっと近づかないようにするでしょう。いや、冗談じゃないです(笑)。

 電子書籍に関連して「本の価格」が話題にのぼることも多い昨今ですので、こうしたものに目を通してみるのも面白いのではないかと思い、電子書籍化してみました。今日の新古書店に当たる「ゾッキ屋」などというものもやり玉に挙げられていて、この当時から出版業界の抱える問題点はそう変わらないのだなと思わされます。なおこの「円本」に対するリアクションのひとつとして登場したのが「岩波文庫」であることは、岩波文庫の巻末の「読書子に寄す」で確認できます。つまり円本ブームが今日の文庫本の登場へとつながったわけです。

 技術的内容としては3種類の圏点が混在していること、行頭字下げが行われていないこと、かなり不規則な見出し後の字下げや文字修飾など、いわゆる通常の小説などとは随分性格の異なるコンテンツです。一部の見出しはページ上部に横書きで記述されていたようなのですが、さすがにこれは再現できませんでした。また、koboの画面サイズを考え、見出しの字下げ量を適宜調整しました。

 なお、このコンテンツ自体はkoboのストアにも青空文庫経由で入っていて、「1円」で購入できます。1円なんですよね、偶然にも

※1 セミナーでInDesignからのEPUB作成やめようよとか言っておいてInDesign使うのかよ、というツッコミをいただきそうですが、あれはそもそも数年先にそちらの方向を目指そうよ、という話ですので悪しからず。自分でつくったワークフロー使わないのももったいないですしね。いずれもっと効率的なEPUB制作ツールが出てくるまでの「繋ぎ」です。

(2012.8.22)

 サンプルEPUBファイルを更新しました。CSSのdisplay:table表記が原因でAdobe Digital Editions 2.0にて画像が表示されない問題の修正です。また、また、各xhtmlファイル内の<head>タグ内<meta>〜表記が原因でバリデートエラーが出ていましたので削除しました。

(2012.9.27)

 Wordpressの更新に伴い、ダウンロードファイルを削除しました。古い情報のためもう必要ないものと判断したものです。

(2020.1.17)

プロフィール
Jun Tajima

こちらにて、電子書籍&Web制作を担当しています。
このブログは、EPUB3をはじめとした電子書籍制作担当オペレータからの、「電子書籍の制作時にたとえばこんな問題が出てきていますよ」的な「現地レポート」です。少しでも早い段階で快適な電子書籍閲覧・制作環境が整うことを願って、現場からの声を発信していこうと目論んでおります。

当ブログ内の記事・資料は、私の所属しております組織の許諾を得て掲載していますが、内容は私個人の見解に基づくものであり、所属する組織の見解を代表するものではありません。また、本ブログの情報・ツールを利用したことにより、直接的あるいは間接的に損害や債務が発生した場合でも、私および私の所属する組織は一切の責任を負いかねます。