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Microsoft EdgeのEPUB表示チェック

2017/04/02

 Microsoftの標準ブラウザ、Edgeが4月のアップデートでEPUB表示に対応するとのニュースがあり、Insider Preview版のWindows10環境をセットアップして表示の確認を行ってみました。
 これまで、MacではiBooksによってOSレベルでのEPUB対応ができていましたが、WindowsはデフォルトアプリでのEPUB閲覧に対応しておらず、これがファイルとしてEPUBを配布する際の障害となっていたことは否定できません。今回EdgeがEPUBに対応したことで、近い将来PDFのような気軽さでEPUBを配布することができるようになったわけです。
 さて、その表示能力はどこまでのものなのか。以下、表示チェック結果です。項目名は電書ラボEPUB制作仕様のそれに準じています。

こちらをクリックすると表示結果ページに飛びます)

 なお、テストには「Windows 10 Insider Preview Build 15058」を使用しております。これは正式リリース前のベータ公開版ですので、正式公開時には仕様の修正が行われている可能性は当然あります。あらかじめご了承ください。また、表示確認用のテストEPUBファイルとして、電書ラボで公開中のチェック用epubファイルを使いました。

文字・字形

Unicode IVSの表示に対応

Unicode IVSの表示に対応

 サロゲートペア文字、Unicode IVS(異体字セレクタ)共に対応できているようです。一部の文字が化けて豆腐になっていますが、これはMSゴシックが当該文字のグリフを持っていないことが原因と思われます。Insider Preview版では日本語フォントの切り替えができませんでしたので、ここはこれ以上はわかりません。
 また、U+2014(EM DASH)が二分幅で表示される、U+005Cのバックスラッシュが円記号「¥」として表示されるなどの挙動が見られましたが、いずれもフォントに起因する問題と思われます。

組版表現(文字)

縦中横表示に対応

縦中横表示に対応

 縦中横の表示に対応しているようです。ただし、最新の正式プロパティであるtext-combine-upright:allの指定が必要で、text-combine:horizontal、epub-text-combine:horizontal等の指定では効きません。
 なお縦中横の実装方法としては何文字であっても変形させて1em幅に入れ込む方式のようです。ちょっと不満な点としまして、半角文字1文字であっても横幅1emに変形してしまうため、かなり横長に潰れて見えます。1文字の場合には両側にスペースを入れ、1emの中央に入れる形へ仕様変更して欲しいところです。
 また、文字の正立/横転指定(text-orientation)を行った場合に、文字のサイズが異常に大きくなる不具合が見られましたが、再度テストした際には確認できませんでした。何らかの条件によって症状が出るのかも知れません。
 埋め込みフォントはOTF、WOFFに対応、TTF(TrueType)は非対応ということのようで、これはEPUB3のコアメディアタイプに合致します。いずれはTTFにも対応してもらえれば嬉しいですが、現状での対応としてはまずは妥当と言えるでしょう。
 また、部分言語指定には現状非対応のようです。日本語と中国語の混じった文書での字形の正しい表示や、日本語内の英語の正確な読み上げ等に絡んできますので、将来的には対応して欲しいところです。

組版表現(段落)

縦組みの表で表示に不具合

縦組みの表で表示に不具合

 字間アキ・ツメ指定(letter-spacing)、行間アキ指定(line-height)、段落間アキ(margin)など、基本的な指定は全て問題なく働くようです。
 tableを使用した表組みでは、複数ページにまたがる表の表示で罫線(border)が表示されない挙動が見られた他、縦組みの表が複数ページにまたがった場合に項目が重なって表示されてしまう不具合が見られました。

組版表現(ページ)

縦組み時に写真が下にはみ出す

縦組み時に写真が下にはみ出す

 page-break指定による改ページには対応しているようです。
 改丁/見開き指定(opf内spine項目でのpage-spread指定)は非対応のようで、章扉を見開きの左ページに必ず配置する、等の指定は現状効きません。
 また、本扉などで用いられる文字の左右中央指定も現状中央に文字が表示されないようです(電書協ガイドP40での記述方法でチェック)。これは電書協ガイドの参照記法自体が割とピーキーなのは否定できないので無理は言えませんが、多くのビューアで対応済みではあるので対応を期待したいです。
 囲み罫の表現ですが、通常のケースではほぼ問題がないものの、縦組み時にカコミ内に画像を配置した際に画像が下方向のpadding指定を無視してはみ出るという挙動が見られました。これはKindleのiOS版で見られるのと同じ不具合ですが、Edgeの場合は縦組みの場合のみ見られるようです。

組版表現(注・索引・コラム)

注のポップアップに対応

注のポップアップに対応

 なんと、注がポップアップされるようです(epub:type=”noteref”指定箇所のポップアップ表示対応)。ただし、注と本文が同一のXHTML内にある場合のみに限られるようで、ファイルが分かれている場合には通常のリンクとして動作します。現状注のポップアップができるビューアはEdge以外ではiBooksとKoboのiOS版のみと思いますので、ここはなかなか尖った実装かと思います。

画像

画像のサイズ指定が効かない

画像のサイズ指定が効かない

 現状透過PNG形式、透過GIF形式に非対応の模様で、全て背景色が白として表示されます。
 SVGは通常の画像として挿入する限りにおいてはほぼ表示できるようですが、複雑なパターンの部分は表示できず、黒になるようなケースもありました。
 また、現状縦組みでの画像のサイズ指定が効きません。横組みでもかなり効くケースが限られるようです。個人的な希望としましては、他のビューアとの互換性を考えるとimg要素への%指定が効くようになると嬉しいところかなと思っています。

外字画像

外字画像が異常に大きく表示される

外字画像が異常に大きく表示される

 外字画像は異常に大きなサイズで表示されてしまいます。これは明らかな不具合ですので、早急な修正が待たれます。絶対に外字が入らないと言い切れるコンテンツは日本語の電子書籍ではほぼないのが現状ですので。

目次

論理目次の階層表示に対応

論理目次の階層表示に対応

 論理目次の階層表示に対応しているようです。ルビは表示できないようですが、これは現状表示できないビューアの方が多いので仕方ないところかなと思います。

 以上ですが、最後にちょっと感心したポイントを挙げておくと、EdgeのEPUBビューアは簡単に音声読み上げができるようになっており、画面右上の読み上げボタンでEPUBの音声読み上げを体験できます。かなりアクセシビリティを意識したつくりと言えるでしょう。
 EdgeのEPUB閲覧機能は正直現時点で相当いいところまで到達しているものと思いますので、今後の継続的な改定・機能向上を望みたいところです。個人的には、スクロールモードでの表示はあってよいのではないかと思っています。

(2017.4.3)

6/8 JEPAセミナーでの調査結果を踏まえ、縦中横の挙動に関する部分の表記を修正しました。

(2017.6.9追記)

OMUSUBI EPUBMAKER 2.0リリースです

2016/10/17

OMUSUBI EPUBMAKER

 以前に発表しました、フィックス型EPUB作成アプリ「OMUSUBI EPUBMAKER」の改訂作業がやっと終わりました。「OMUSUBI EPUBMAKER 2.0」です。今回の改訂の一番の目玉は、UI部分をAppleScript StudioベースからXojoベースで作り直した点ですので、機能的にはそこまで大きな変更はありませんが、いくつか以前からご要望をいただいていた点、実装が不十分だった点を修正しました。今回の改訂の機能的な追加ポイントは以下になります。

  • 論理目次項目の外部読み込みに対応
  • Finderのソート順通りに画像が並ばないケースがあった点の修正(自然順ソート対応)
  • 「ImageMagickでの画像変換を行わない」オプションの追加
  • ImageMagickインストール先フォルダ指定をウィンドウ内でパスの書き換えが可能な仕様に変更
  • デフォルトの画像サイズを長辺2000pxに変更
  • その他EPUBのメタデータを若干変更

 コミックなどで使われる、画像をまとめてEPUBのパッケージの形にした「フィックス型」EPUB作成用のアプリはコマンドラインツールとしては例えばWakuFactoryさん(お世話になってます!)の「mkepub 1.4」などがありましたし、GUIを備えたものとしてはVOYAGERさんの「Romancer」に固定型EPUBの作成機能もあったりしますので、既にそれなりに環境が整ってきてはいるのですが、オフライン環境で使えるGUIアプリの需要もまだないわけではないだろうと思いましたので、こちらをリリースすることとしました。

 ごく単純なEPUBパッケージアプリで、高度なことはなにも出来ませんが、気軽にフィックス型のEPUBを作りたいという要望には応えられると思っています。また、インタラクティブなEPUB作りのためのベース生成用としても使えると思います。ソフト名は、ごはんを握っておむすびを作るように、画像の束から手軽にEPUBを作れるアプリというようなところから付けました。もっとカジュアルに、それこそPDFの代わりくらいの感覚でEPUBを使ってほしいなという願いを込めております。

 こちらのアプリはフリーで提供させていただきますので、ご自由にお使いください。書誌情報内にメタ情報でクレジットが入りますが、それ以外の制限はありません。
 ただし、個人向けということでISBNやJP-eコードなどの出版社向けID情報の入力機能は外しています(出版社ごとに要件が異なるためカスタムにせざるを得ません)。

 ビジネス利用のために必要な場合などのカスタマイズは別途こちらの窓口からご依頼下さい。私の所属する組織で承らせていただきます。

使い方

column58_2このアプリは画像サイズの取得およびサイズ変換にフリーの画像操作・変換ソフト「ImageMagick」を使用します。こちらなどからMac用パッケージを取得し、あらかじめインストールをしておいて下さい。その後「OMUSUBI EPUBMAKER」を立ち上げ、「設定」タブを開いてインストールフォルダを指定します。デフォルトでは“/opt/ImageMagick/”にインストールされるはずで、この状態であれば設定の必要はありません。

1 変換元画像の準備

 任意のフォルダに素材として使う画像を準備しておきます。形式はjpgもしくはpng、カラーモデルはRGBにしてください(jpg/png形式以外の画像はパッケージ化されません)。Finder上で画像をリネームし、ページ順に並ぶようにしておきます。連番がラクだと思います。なお、1番目の画像を自動的にカバー画像として設定します。全画像の縦横のピクセル数を統一しておくのが望ましいです。

2 書誌情報の入力

column58_3 アプリを起動し、各種書誌情報を入力します。制作者名は3名まで対応しています。出版者名は任意入力です。「カナ(整列用)」には読みのカタカナを入力してください。

3 目次情報の入力

column58_4 目次が必要な場合は情報を入力します。なお、ここで言う目次はコンテンツ内にページとして表示される目次ではなく、ビューアのメニューから呼び出せる「論理目次」です。
 目次として項目設定したいページの変換元画像のファイル名を表の「設定する画像名(拡張子込み)」に拡張子込みで記入し、目次に表示したいテキストを「目次表示テキスト」に記入していけばOKです。項目を入力するには、「+」ボタンを押して行を増やし、順次項目を入力してください。「−」ボタンを押すと最後の1行が消去されます。

 今回のバージョンから、外部テキストからのデータ読み込みにも対応いたしました。設定画像名と目次表示テキストの間をタブで区切ったタブ区切りテキストを「読込」ボタンで指定することで情報を読み込むことができます。なお、読み込めるテキストの文字コードはBOMなしのUTF-8のみとなります。同梱する倫理目次指定用テキストのサンプルをご参照ください。
 目次を全く指定しなかった場合、「表紙」の項目だけが目次に入ります。

4 綴じ方向の選択

column58_5 「右綴じ」「左綴じ」のいずれかを選択してください。通常縦書き文書は右綴じ、横書き文書は左綴じです。EPUB3では綴じ方向の混在はできませんので、必ずいずれかを選んでください。デフォルトでは「右綴じ」が選択されています。

5 見開き/単ページの選択

column58_6 「見開き」「単ページ」のいずれかを選択してください。EPUB3にはページ配置の指定項目(page-spread)があり、これを各ページに指定することで見開きレイアウトが実現できます。単ページを指定した場合は画面中央に各ページが配置されます(rendition:page-spread-center)。ただし、iBooksなどまだ指定を反映しないビューアも数多くあります。Readium等ではページ指定が反映されて表示可能です。デフォルトでは「見開き」が選択されています。

6 元画像のフォルダを選択

column58_9 変換元画像のフォルダを選択し、指定します。

7 リサイズ画像サイズ/画質を指定

column58_7 このアプリは画像のサイズを自動的にリサイズし、パッケージ化しますが、リサイズの際の画像サイズ(長辺)を指定することもできます。変更が必要なら「設定」タブをクリックしてドロワーを展開し、数値入力を行ってください。数値の上限などはありませんが、iBookStoreなどEPUB内使用画像のサイズに制限を設けているストアもありますので、ケースに応じて適切な値を入力するようにしてください。2016年10月現在では、上限2000程度に止めておくのが無難です。
 同じく、JPEG圧縮時の画質も1〜100の間で指定できます。数字が大きいほど高画質ですが、その分ファイルサイズも大きくなります。デフォルトの画質は70です。
 PNG圧縮の画質は、減色をするかどうかを選択出来る他、減色時の色数を2〜256色で選択できます。デフォルトの色数は256色です。
 画像サイズ/画質はツールが前回の設定値を記憶します。また、「デフォルトに戻す」ボタンで既定値に戻すことができます。

column58_8 なお、「ImageMagickでの画像変換を行わない」オプションがチェックされていた場合には、画像のリサイズ処理を行わず、指定した画像をそのままパッケージ化します。Photoshopなど外部アプリでリサイズ処理した画像をそのままEPUB化したい場合にご利用ください。

8 EPUBパッケージの作成

column58_10 「作成」ボタンを押すと、EPUBパッケージが元画像のフォルダと同じ階層の「タイトル名」フォルダ内に作成されます。ファイル名は作成年月日/時刻+「.epub」です。

ダウンロードはこちら
>>OMUSUBI EPUBMAKER
Mac OS X 10.9/10.11にて動作確認済みです

※10.7以降で搭載されたセキュリティ機能「GateKeeper」により、アプリを実行出来ない場合があります。その場合はこちらのページの「未確認の開発元からのAppを開き、そのAppをGatekeeperの監視の対象外にする方法」を参考に設定を変更することで起動できます。

ImageMagickはこちらより入手できます。

 

 「homebrewでImageMagickをインストールしている場合にインストーラパスの設定ができない」というお話をいただきましたので、設定用簡易マニュアルを作りました。なお、2.0からGUIの画面内でもパスの打ち換えが可能になっています。マニュアル改訂が追いつかないのでそのうち改訂します。すいません。

「OMUSUBI EPUBMAKER」homebrewでのImageMagickパスの通し方 (1264)

 とりあえず、以前に私が作成した資料をEPUB化してみました。以下の画像をクリックするとブラウザ内でご覧いただけます。

InDesignデータ→電子書籍で字形の変化する文字

 フルサイズでご覧になりたい場合は「open in New window」をクリックしてください。

 これはKitaitiMakotoさんの作られた「BiB/i’d」を利用したものです。「BiB/i’d」はウェブデザイナー松島智さんが作成したブラウザ内で動作するEPUBリーダ「BiB/i」を手軽にブログ内などで利用するためのサービスです。古いブラウザ環境などで見られない場合は、最新版のChrome/Safari/Operaでご覧いただければ幸いです。
 もともとA4サイズの資料でしたので少し文字が細かくて読みにくいですが、そこはご容赦ください。

 なお、こちらのアプリを利用したことによる損害等につきまして私として責任は負いかねますので、あくまで自己責任にてご利用ください。

(2016.10.18)

Kindleでの見開き位置指定が正しく記述されない問題などを修正したバージョン2.0.2をリリースしました。その他のアップデート内容は同梱のReadme.txtをご覧下さい。

(2017.1.27追記)

電子書籍で外字を使うということについて

2012/06/06

 以前のエントリーで印刷用DTPデータを電子書籍化する際に発生する外字問題に関して書かせていただきました。緊デジの事業開始も迫っていますので、今回はそもそも電子書籍で「外字」を使うということがどういうことなのか、ごく一般的な注意点について書かせていただきます。なおこれは、主に出版社サイドの方に対してのエントリーのつもりで書いております。過去のエントリーとの表記の重複等があるかとは思いますが、あらかじめご了承ください。制作サイドの方向けには、別途出版デジタル機構さまより詳細な資料が提示されるかと思いますので、そちらをご参照ください。

現在電子書籍で使用できる文字数は、印刷物のそれよりかなり少ない

電子書籍で使用可能な文字の数

電子書籍で使用可能な文字の数

 さまざまな種類の「外字」そのものの定義については、こちらのWikipedia項目に詳細な説明がありますので、ここでは今回問題になりそうな電子書籍での「外字」について簡単に述べるに留めておきたく思います。

 上記Wikipedia項目の表記のうち今回問題となる「外字」は、「文字コードなどの特定の文字集合に含まれない文字」を指します。より詳細には、印刷用文字集合規格であるAdobe-Japan1※1に含まれていながら、UnicodeやShift_JISに含まれておらず、テキストファイル内でそのまま表示できない文字のことです。

 一例として「小塚Pr6N」の場合を見てみますと、InDesignで使用できる文字数は23058文字、うちEPUB等で使用できるUnicodeで表現できる文字数は15393文字です。XMDF/ドットブックで使用できるShift_JISの場合はさらに少なくなり、約7000文字です。UnicodeやShift_JISで表現できない文字は、外字画像として表現するか、もしくはInDesignがバックグラウンドで保持している親字への変化を容認するかといった対処が必要となります。

合字/CIDのみの文字の文字化けの例

合字/CIDのみの文字の文字化けの例

 つまり、現状電子書籍で使用できる文字数が、印刷用データの作成環境で使用できる文字数よりかなり少ないために、外字での対策が必要となります。この「UnicodeやShift_JISで表現できない文字」のうち、以前のエントリーでも書いたように「複数の文字コードで構成された合字」や「CID/GID番号のみしか割り当てられていない文字」等のテキストで表現できない文字については、そのままテキストで表現はできないため、基本的に制作会社サイドの責任で外字画像にすることになります※2

親字への字形変化の例

親字への字形変化の例

 一方で、出版社サイドでXMDF・ドットブック/EPUBで表現できる文字に変化することを許容するか、外字にして対応するかの判断が必要となりそうなのは、「印刷標準字体」「エキスパート字形」「JIS90字形」などの微細な字形変化に関する部分です。厳密に印刷物と同じ字形の再現を求めた場合、かなりの文字を外字にすることになりますが、現状、電子書籍(およびWeb)の外字表現には、以下のような問題点があり、通常の紙印刷物と同じような外字の表現は技術的にできません。ご一読いただければ幸いです。

印刷物と電子書籍での「外字」表現の違い

 通常、印刷用DTPデータの制作で外字を挿入する場合には、

1 Illustrator等で外字画像を作り、InDesignの文中に画像をインラインで挿入する
2 フォント作成ソフトを使ってフォントを作り、InDesign内からそのフォントを指定する
3 Biblosなど市販の外字フォントを使用し、InDesign内からそのフォントを指定する

外字がはっきりと確認できてしまう

外字がはっきりと確認できてしまう

 などの手順が考えられますが、いずれもきちんと制作されていれば、実際に印刷した際には周囲の文字とほとんど区別がつきません。しかし、現状の電子書籍での「外字」は、テキスト内にPNG等の形式で制作した「画像」を挿入する形になるため、文章の流れの中ではっきりと「外字」であることがわかってしまうことがしばしばあります

 また、現状電子書籍ではテキストを表示するフォントについても制作サイドで指定することはできず、読者が選んだビューアーに依存することが多いため、外字にした文字が通常テキスト部分とはっきりと違ってしまうといった問題が起きてきます。

フォントを変更しても外字はそのまま

フォントを変更しても外字はそのまま

 さらに、読者の好みで本文フォントを切り替えられるビューアーも存在するため、読者がこうしたビューアーを選択した場合、なおさら「外字」がはっきりと目立ってしまう可能性が高くなります。本文をゴシック体に切り替えても外字部分だけは明朝体のまま、といった状況が起こり得ます

 参考画像は、緊デジで制作されたものではありませんが、実際に現在市販されているXMDF電子書籍内での外字表示の例です。外字がはっきりと見分けられる状態がご確認いただけるかと思います。

 加えて、例えばEPUB3で「外字にルビを振る」といった処理をした場合に、一部のビューアでルビが表示されないといった現象も確認できています。EPUB3の日本語表現に関してビューア側の実装がまだ定まっていないため、このビューアを問題視できるような状況ではありませんが、こうした状況も存在していることをご理解いただければ幸いです。外字は通常のテキスト表示とは異なる「例外的な処理」になり、電子書籍は紙印刷物とは違って読者サイドの閲覧環境の対応も必要になるため、こうした状況は今後も出てくることが考えられます。

 あくまで個人的な意見ですが、コンテンツの最終的な完成度を考慮した場合、現状の電子書籍での外字対応は固有名詞等に限定し、最小限に留めたほうがコンテンツの相対的な品質は上がるのではないかと考えております。

将来的にはテキストの一部として異体字を表現できる可能性がある

 なお、こうした状況は、漢字の異体字に関しては将来的にUnicode IVSが普及し、異体字を画像としてではなくテキストの一部として(つまり外字ではない形で)表現できるようになれば相当改善されるかもしれません。ただし、前述したように従来の紙印刷物とは異なり最終生成物は紙ではありませんので、IVSに関しても制作環境側だけではなく読者の閲覧環境側での対応も必要となります。従って、順当にIVSが普及するとしても実際にコンテンツ内でIVS異体字を使用できるのはまだ当分先の話になりそうです。

 今回の例でもわかるように、電子書籍はあらゆる意味で黎明期であり、紙書籍と同様の表現力を持つにはまだまだ時間がかかります。各出版社のみなさま、制作会社のみなさま、書店のみなさまのご理解・ご協力をいただき、共に新たな文化を健全に育成していければ良いと考えております。

 なお、以下に以前の記事をもとにPDF化した、外字化が必要となりそうな文字の簡単な資料を用意させていただきました。ご参照いただければ幸いです。

 InDesignデータ→電子書籍で字形の変化する文字 (2236)

 今回お世話になりました方々は以下の通りです(50音順/順不同)。私一人ではこの資料を整えることは到底不可能でした。みなさまの深い知識・技術にあらためて尊敬の念を感じるとともに、ご協力に心からお礼を申し上げます。

 ありがとうございました。

※1 Adobe-Japan1コレクションには1-6/1-5/1-4などがありますが、ここでは現在最もグリフ数の多い1-6を例として取り上げています。各文字集合規格の詳細につきましては、こちらのページが参考になります。

※2 単位などは通常の文字列に置き換えるといった対応も考えられますが、いずれにせよ一定のルール策定が必要と思います。また、各種字形変化に関しましては、市川せうぞーさんに制作していただいたムービー群が参考になります。あわせてご参照ください。

・Unicodeポイントを持たず、CID番号しか持たない文字は「1A」という文字に化ける

・「箇条書きリスト」の機能を用いて入力したリストの頭につく番号/記号が消える

・「スモールキャップス」「オールキャップス」の大文字が小文字に変わる

・ビブロスフォントセットは元の文字に変わる

・SINGグリフレット機能を利用して入力した異体字・外字は基底文字に戻ってしまう

(2012.6.6)

 EPUB3での外字ルビに関する部分につきまして、実際には存在しない「日本語EPUB3」という規格が存在しているかのような誤解を与えてしまうのではないか、とのご指摘をいただきましたので、表記を「日本語EPUB3自体規格策定が済んでいるとは言い難いため」から「EPUB3の日本語表現に関してビューア側の実装がまだ定まっていないため」に訂正させていただきました。

(2012.6.8追記)

プロフィール
Jun Tajima

こちらにて、電子書籍&Web制作を担当しています。
このブログは、EPUB3をはじめとした電子書籍制作担当オペレータからの、「電子書籍の制作時にたとえばこんな問題が出てきていますよ」的な「現地レポート」です。少しでも早い段階で快適な電子書籍閲覧・制作環境が整うことを願って、現場からの声を発信していこうと目論んでおります。

当ブログ内の記事・資料は、私の所属しております組織の許諾を得て掲載していますが、内容は私個人の見解に基づくものであり、所属する組織の見解を代表するものではありません。また、本ブログの情報・ツールを利用したことにより、直接的あるいは間接的に損害や債務が発生した場合でも、私および私の所属する組織は一切の責任を負いかねます。

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