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Kindle PaperWhite2013のリンクが脚注として表示される現象について

2014/03/14

 検証機としてKindle PaperWhite2013を入手したのですが、どうやら大きめの地雷を発見してしまったっぽいので報告です。

 どうもPaperWhite2013の新機能の脚注ポップアップ周りにバグがあるらしく、通常のリンクを脚注として表示してしまうことがあるようです。なお、Kindle PaperWhiteのファームウェアは「Kindle5.4.2(2155730032)」です。一方で正常にリンクが動作する場合もあり、正直条件が確定できませんでした。以下、その報告です。

普通に記述したリンクタグが脚注として表示されてしまう

 リンクのタグは例えば以下のような感じです。

リンク元:

<p>二 遠野の町は南北の川の落合にあり。以前は<a class=”cyu” href=”p-009.xhtml#ref-002″>七七十里<span class=”key” id=”key-002″>(2)</span></a>とて、七つの渓谷おのおの七十里の奥より売買の貨物を聚め、その市の日は馬千匹、人千人の賑わしさなりき。四方の山々の中に最も秀でたるを早池峯という、北の方附馬牛の奥にあり。東の方には六角牛山立てり。石神という山は附馬牛と<a class=”cyu” href=”p-009.xhtml#ref-003″>達曾部<span class=”key” id=”key-003″>(3)</span></a>との間にありて、その高さ前の二つよりも劣れり。大昔に女神あり、三人の娘を伴ないてこの高原に来たり、今の<a class=”cyu” href=”p-009.xhtml#ref-004″>来内<span class=”key” id=”key-004″>(4)</span></a>村の伊豆権現の社あるところに宿りし夜、今夜よき夢を見たらん娘によき山を与うべしと母の神の語りて寝たりしに、夜深く天より霊華降りて姉の姫の胸の上に止りしを、末の姫眼覚めて窃にこれを取り、わが胸の上に載せたりしかば、ついに最も美しき早池峯の山を得、姉たちは六角牛と石神とを得たり。若き三人の女神おのおの三の山に住し今もこれを領したもう故に、遠野の女どもはその妬を畏れて今もこの山には遊ばずといえり。</p>

リンク先:

<p id=”ref-002″><a class=”cyu” href=”p-003.xhtml#key-002″>(2)</a>この一里は小道すなわち坂東道なり、一里が五丁または六丁なり。</p>
<p id=”ref-003″><a class=”cyu” href=”p-003.xhtml#key-003″>(3)</a>タッソベもアイヌ語なるべし。岩手郡玉山村にも同じ大字あり。</p>
<p id=”ref-004″><a class=”cyu” href=”p-003.xhtml#key-004″>(4)</a>上郷村大字来内、ライナイもアイヌ語にてライは死のことナイは沢なり、水の静かなるよりの名か。</p>

 特に変わった書き方をしている訳でもないごく当たり前のリンク指定で、タグは電書協ガイドのものをそのまま用いています。普通に考えればこれで脚注にはならないのですが、手元のPaperWhite2013では以下のように脚注として表示されます。

リンクが脚注として表示されてしまう

まあこの箇所に関しては注釈へのリンクですので結果オーライとも言えるのですが、これが例えば目次のリンクでも発動してしまいますので困ったことになります。

目次でも・・・

別の実機でもテストしてみた

 ちょっとラチがあきませんので、Kindle PaperWhite2013をお持ちの、ブログ見て歩く者を運営されているライターの鷹野凌さんにご協力をいただき、別の実機でもテストを試みました。結果はほぼ同じでした。ただ、全く同じコンテンツで正常に動作したリンクと脚注として表示されてしまったリンクに差異が見られ、正直法則性が全く読めません。鷹野さんのPaperWhite2013のファームウェアは「5.4.2.1(2187320002)」とのことでしたので、もしかしたらファームウェアの差によって挙動が変わるのかも知れませんが、率直に言ってそんなことで「リンク」などという基本的な部分の動作の挙動が変わられてしまっては困ります。

 別のマークアップ方式ではどうなるだろうということで、電書ちゃんねるの高瀬拓史さんにもご協力をお願いし、でんでんコンバーターの生成した注釈相互リンクコンテンツでもテストを行いました。こちらのソースは以下の通り※1

リンク元:

<p>一 女鹿たづねていかんとして<a id=”fnref_1″ href=”#fn_1″ rel=”footnote” class=”noteref” epub:type=”noteref”>1</a>白山の御山かすみかゝる<span class=”upright”>〻</span></p>
<p>一 うるすやな<a id=”fnref_2″ href=”#fn_2″ rel=”footnote” class=”noteref” epub:type=”noteref”>2</a>風はかすみを吹き払て、今こそ女鹿あけてたちねる<span class=”upright”>〻</span></p>

リンク元:

<div class=”footnotes” epub:type=”footnotes”>
<hr />
<ol>
<li>
<div id=”fn_1″ class=”footnote” epub:type=”footnote”>
<p>して、字は〆てとあり。不明&#160;<a href=”#fnref_1″>&#9166;</a></p>
</div>
</li>
<li>
<div id=”fn_2″ class=”footnote” epub:type=”footnote”>
<p>播磨檀紙にや。&#160;<a href=”#fnref_2″>&#9166;</a></p>
</div>
</li>
</ol>
</div>

 こちらではリンク元の側がそもそもリンクとして動作してくれませんでした。もちろんどちらのコンテンツも、他のEPUBビューアでは少なくとも相互リンクとしてはきっちり動作してくれています。なんだかもうわけがわかりません。

そもそも脚注のマークアップ記法説明ドキュメントが見あたらない

 そもそもKindle PaperWhite2013の脚注ポップアップ対応は先日の制作者向けセミナーでもPaperWhite2013の新機能として説明されていましたが(鷹野凌さんのレポート記事)、最新のKindle Publishing Guidelineにも記法の説明がありません。
 制作者サイドとして切に望みたい対応は、epubの標準的な脚注記法に合わせて実装してくれることなのです。ですがどうもそうはなっていないようです。実際に「<a epub:type=”noteref” href=”p-000.xhtml#ref-000″>○○</a>」のような形でIDPFの脚注仕様に合わせたマークアップもやってみたのですが、この方法で明示的に脚注指定した箇所だけでなく、通常のリンクとしてマークアップした箇所まで脚注として表示されてしまいました(参考:「iBooksの注ポップアップを試してみた」)。現状、Kindle向けコンテンツでは明示的に脚注リンクを指定する方法が提示されていない状態です。

 また、もうひとつの問題は、Amazonが校正用ビューアとしてリリースしている「Kindle Previewer」上ではこの現象は再現せず、あくまでKindle PaperWhite2013の実機上でのみ発現する現象であることです。つまり、「Kindle Previewer」がプレビュー用ツールとしての役目を果たせていません。Kindle Previewerできっちり校正をかけリリースしたコンテンツが、実際の読者の手元で見たときにはエラーになってしまう可能性があるというのでは、何のためのプレビュー用ツールかわかりません。

 少なくとも今回のケースで、コンテンツ制作側での対処は無理です。何しろごく当たり前のリンク指定が脚注として表示されてしまい、発生条件が機械によって変わるのですから。この件に関しては、Amazonには早急な原因究明と、とりあえずの処置としての注釈ポップアップ処理の停止措置を望みたく思っています。

検証に使ったファイルはこちら
>>[download id=”32″]

 Kindleに限らず、現状電子書籍のビューアはまだまだ不具合が多く、機能面も必ずしも十分とは言えません。ただ、これは積極的に声を上げ、修正・改良を促すことで将来的にきちんとしたものを提供してもらうという気構えが制作者サイドにも求められるのではないかと思います。Amazonのフィードバック窓口はこちらです。みなさんどしどし意見を寄せ、修正すべき点はどんどん修正してもらうのが良いのではないかと思います。

※1 EPUBの仕様に従って明示的に脚注を指定しているマークアップとのこと。

(2014.3.17)

プロフィール
Jun Tajima

こちらにて、電子書籍&Web制作を担当しています。
このブログは、EPUB3をはじめとした電子書籍制作担当オペレータからの、「電子書籍の制作時にたとえばこんな問題が出てきていますよ」的な「現地レポート」です。少しでも早い段階で快適な電子書籍閲覧・制作環境が整うことを願って、現場からの声を発信していこうと目論んでおります。

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