JLREQとCSS(1)

2017/06/09

 こちらのエントリは、JAGAT XMLパブリッシング準研究会で今期の研究テーマとして、W3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)と、これに関連してVivliostyleの村上真雄さんが提出したW3Cメンバーサブミッション「Web技術を用いた日本語組版の現状」を取り扱っていることに伴い、会員以外の方の意見を広く求めるとともに、記録を残しておく目的で議事録をベースに補足したものを公開するものです。

 間違い、補足などございましたらご意見いただければ幸いです。なお、当ブログはコメント許可制を取っているため、反映に時間がかかります。あらかじめご理解ください。
 方針としましてはW3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)を先頭から読んでいき、各要素に対応するCSSが存在するのか、存在するとして実用段階なのか、InDesignなどの組版ソフトではどういった形で機能を実現しているのか(いないのか)、などについて見ています。なお全体に対しての包括的な説明の部分に関しては、細かな部分は次回以降にその部分の説明が出てきた時に掘り下げる、としてスルーしている箇所があります。

 なお、こちらで取り上げております各CSSプロパティはまだドラフト仕様の段階のものも多いため、今現在すぐに使えるものばかりではありません。Webブラウザで使用出来るかどうかはこちらなどでご確認ください。また、電子書籍のRSで使用出来るかどうかは、現在広範に調査した資料がありません。いずれ当研究会の活動として調査を行いたく考えていますが、しばらく時間はかかるかと思います。

JLREQ 2.1.1 日本語組版に使用する文字

「日本語組版に使用する和文文字では,主に漢字等,平仮名及び片仮名を使用する」
 対象とするUnicodeの符号番号も参考として記述されている。
 JLREQで使われているコードと実際の組版ソフト内で使われているコードには違っているケースがある(付属書A)。

JLREQ 2.1.2 漢字等,平仮名,片仮名

 「漢字等,平仮名及び片仮名は,正方形の文字の外枠を持っており,その文字の外枠の天地左右中央に,文字の外枠よりやや小さくした字面を持っている」
※日本語の文字の構造についての概略的な説明。
※参考リンク:モリサワフォント用語集「字面」

JLREQ 2.1.3 漢字及び仮名の配置の原則

InDesignでのフォント内情報を利用した詰め組指定

InDesignでのフォント内情報を利用した詰め組指定

 「漢字等,平仮名及び片仮名は,行に文字を配置していく際には,原則として,文字の外枠を密着させて配置するベタ組にする」
 柱や見出しなどではアキ組みを使うケースがある。
※あくまでも書籍本文組版に関しての話であることには注意するべき。広告などでは詰め組みが多い。
※参考リンク:なんでやねんDTP「「ベタ組み」について…少しだけ…」
 詰め組の方法としては均等詰めと字面詰めがある。

CSS:文字のアケ・ツメ
■通常の文字ツメ・文字アケ
letter-spacing
 追加のスペースを隣接する文字と文字の間に入れる。いわゆる手動での文字アケ・ツメ指定

■Opentypeフォント内部の情報を利用する文字ツメ
font-feature-settings: “pwid”; フォント内のプロポーショナル(文字ツメ)情報を有効にする。これは今のブラウザでも一応使える。
font-variant-east-asian: proportional-width; 日本語などのフォント内のプロポーショナル(文字ツメ)情報を有効にする。より使いやすくなるはずだが実装はまだまだ。
font-variantが上位プロパティ(フォント関係のさまざまな指定をここでまとめて指定できる)。
 なお、このツメ処理は表示フォントがプロポーショナル(文字ツメ)情報を持っていることが条件になる。従ってユーザーが表示フォントを切り替えるなどの操作を行った際に無効化される可能性はある。

JLREQ 2.2.3 基本となる組体裁の主な設計要素

 基本版面、柱、ノンブルなど組要素の概略説明。
 「日本語組版と基本版面の基本的概念を理解するためには,格子モデルよりも,大きさが基本版面の1行に相当する,いわばスリットモデルをイメージした方が理解が容易」
 日本語組版では書字方向へのスペース調整は随時行われるが、ページ進行方向のラインは不動。
※参考リンク:JAGAT 【日本語組版とつきあう 4】基本版面の設定と文字の配置

CSS:組方向
writhing-mode ※日本語の縦書きに関する部分
 horizontal-tbが横書き、vertical-rlが縦書き。
 vertical-lrはモンゴルなどで使われる。この他、「sideways-rl」、「sideways-lr」というプロパティがあるが、これは例えば縦書き文書内で特定のブロックを回転させる時などに使う。表の項目とか縦組みで大きな表を入れるときのキャプション横倒しとか。

CSS:段組
 段組に関しての各CSSプロパティの記述は以下。
段幅(段組の最適(最小)文字数指定)
column-width
段数
column-count
段間
column-gap
段間ケイ
column-rule
※なおJLREQには段間ケイに関しての記述がない模様。
※その他いわゆる段抜き見出しに関する処理の記述もあるが、そこは後日JLREQ4章で詳しくやるので今回は割愛。

JLREQ 2.3.2 縦組と横組の主な相違点

日本語の段組の段の配置方法の基本ルールや、日本語の文中に英単語を挿入するための各種の方法(正立/横転/縦中横)に関しての概略的な説明。

CSS:縦中横
text-combine-upright:all
 epub3での古いプロパティとして -epub-text-combine:horizontal などもあった(epub3規格策定時にCSSプロパティ名が正式に確定していなかったため多少の混乱がある)。
※後日JLREQの3章で詳しくやるので今回はこれだけ。

CSS:段組のなりゆきの処理
column-fill:balance/balance-all
 JLREQの見本の指定通りにするには縦組みだとauto、横組みだとbalance-all。

JLREQ 2.4.1 基本版面の設計手順

「日本語組版では,正方形の文字の外枠をベタ組にすることから,まず基本版面のサイズを設計し,そのうえで,仕上りサイズに対する基本版面の位置を決めている」
ここが大きな特色。

JLREQ 2.5.1 基本版面からはみ出す例

 (1行目の)ルビ/圏点、ぶら下がりは版面の外側にはみ出る。ここはボックスモデルを基本としてきたこれまでのCSSと根本的に異なる考え方のひとつ。
※参考リンク:Adobe Indesignヘルプページ ルビの設定方法(InDesign CC/CC 2014)
※参考リンク:InDesinの勉強部屋 InDesign1.0 No.66 圏点
※参考リンク:Wikipedia「ぶら下げ組み」

CSS:裁ち落とし
bleed
Webブラウザなどにはまず関係しないと思われるものだが、仕様としては提案されている。
※参考リンク:日経印刷DTPテクニカルガイド「仕上がりサイズと裁ち落とし」

今回はここまで。

(2017.6.9)



Microsoft EdgeのEPUB表示チェック

2017/04/02

 Microsoftの標準ブラウザ、Edgeが4月のアップデートでEPUB表示に対応するとのニュースがあり、Insider Preview版のWindows10環境をセットアップして表示の確認を行ってみました。
 これまで、MacではiBooksによってOSレベルでのEPUB対応ができていましたが、WindowsはデフォルトアプリでのEPUB閲覧に対応しておらず、これがファイルとしてEPUBを配布する際の障害となっていたことは否定できません。今回EdgeがEPUBに対応したことで、近い将来PDFのような気軽さでEPUBを配布することができるようになったわけです。
 さて、その表示能力はどこまでのものなのか。以下、表示チェック結果です。項目名は電書ラボEPUB制作仕様のそれに準じています。

こちらをクリックすると表示結果ページに飛びます)

 なお、テストには「Windows 10 Insider Preview Build 15058」を使用しております。これは正式リリース前のベータ公開版ですので、正式公開時には仕様の修正が行われている可能性は当然あります。あらかじめご了承ください。また、表示確認用のテストEPUBファイルとして、電書ラボで公開中のチェック用epubファイルを使いました。

文字・字形

Unicode IVSの表示に対応

Unicode IVSの表示に対応

 サロゲートペア文字、Unicode IVS(異体字セレクタ)共に対応できているようです。一部の文字が化けて豆腐になっていますが、これはMSゴシックが当該文字のグリフを持っていないことが原因と思われます。Insider Preview版では日本語フォントの切り替えができませんでしたので、ここはこれ以上はわかりません。
 また、U+2014(EM DASH)が二分幅で表示される、U+005Cのバックスラッシュが円記号「¥」として表示されるなどの挙動が見られましたが、いずれもフォントに起因する問題と思われます。

組版表現(文字)

縦中横表示に対応

縦中横表示に対応

 縦中横の表示に対応しているようです。ただし、最新の正式プロパティであるtext-combine-upright:allの指定が必要で、text-combine:horizontal、epub-text-combine:horizontal等の指定では効きません。
 なお縦中横の実装方法としては何文字であっても変形させて1em幅に入れ込む方式のようです。ちょっと不満な点としまして、半角文字1文字であっても横幅1emに変形してしまうため、かなり横長に潰れて見えます。1文字の場合には両側にスペースを入れ、1emの中央に入れる形へ仕様変更して欲しいところです。
 また、文字の正立/横転指定(text-orientation)を行った場合に、文字のサイズが異常に大きくなる不具合が見られましたが、再度テストした際には確認できませんでした。何らかの条件によって症状が出るのかも知れません。
 埋め込みフォントはOTF、WOFFに対応、TTF(TrueType)は非対応ということのようで、これはEPUB3のコアメディアタイプに合致します。いずれはTTFにも対応してもらえれば嬉しいですが、現状での対応としてはまずは妥当と言えるでしょう。
 また、部分言語指定には現状非対応のようです。日本語と中国語の混じった文書での字形の正しい表示や、日本語内の英語の正確な読み上げ等に絡んできますので、将来的には対応して欲しいところです。

組版表現(段落)

縦組みの表で表示に不具合

縦組みの表で表示に不具合

 字間アキ・ツメ指定(letter-spacing)、行間アキ指定(line-height)、段落間アキ(margin)など、基本的な指定は全て問題なく働くようです。
 tableを使用した表組みでは、複数ページにまたがる表の表示で罫線(border)が表示されない挙動が見られた他、縦組みの表が複数ページにまたがった場合に項目が重なって表示されてしまう不具合が見られました。

組版表現(ページ)

縦組み時に写真が下にはみ出す

縦組み時に写真が下にはみ出す

 page-break指定による改ページには対応しているようです。
 改丁/見開き指定(opf内spine項目でのpage-spread指定)は非対応のようで、章扉を見開きの左ページに必ず配置する、等の指定は現状効きません。
 また、本扉などで用いられる文字の左右中央指定も現状中央に文字が表示されないようです(電書協ガイドP40での記述方法でチェック)。これは電書協ガイドの参照記法自体が割とピーキーなのは否定できないので無理は言えませんが、多くのビューアで対応済みではあるので対応を期待したいです。
 囲み罫の表現ですが、通常のケースではほぼ問題がないものの、縦組み時にカコミ内に画像を配置した際に画像が下方向のpadding指定を無視してはみ出るという挙動が見られました。これはKindleのiOS版で見られるのと同じ不具合ですが、Edgeの場合は縦組みの場合のみ見られるようです。

組版表現(注・索引・コラム)

注のポップアップに対応

注のポップアップに対応

 なんと、注がポップアップされるようです(epub:type=”noteref”指定箇所のポップアップ表示対応)。ただし、注と本文が同一のXHTML内にある場合のみに限られるようで、ファイルが分かれている場合には通常のリンクとして動作します。現状注のポップアップができるビューアはEdge以外ではiBooksとKoboのiOS版のみと思いますので、ここはなかなか尖った実装かと思います。

画像

画像のサイズ指定が効かない

画像のサイズ指定が効かない

 現状透過PNG形式、透過GIF形式に非対応の模様で、全て背景色が白として表示されます。
 SVGは通常の画像として挿入する限りにおいてはほぼ表示できるようですが、複雑なパターンの部分は表示できず、黒になるようなケースもありました。
 また、現状縦組みでの画像のサイズ指定が効きません。横組みでもかなり効くケースが限られるようです。個人的な希望としましては、他のビューアとの互換性を考えるとimg要素への%指定が効くようになると嬉しいところかなと思っています。

外字画像

外字画像が異常に大きく表示される

外字画像が異常に大きく表示される

 外字画像は異常に大きなサイズで表示されてしまいます。これは明らかな不具合ですので、早急な修正が待たれます。絶対に外字が入らないと言い切れるコンテンツは日本語の電子書籍ではほぼないのが現状ですので。

目次

論理目次の階層表示に対応

論理目次の階層表示に対応

 論理目次の階層表示に対応しているようです。ルビは表示できないようですが、これは現状表示できないビューアの方が多いので仕方ないところかなと思います。

 以上ですが、最後にちょっと感心したポイントを挙げておくと、EdgeのEPUBビューアは簡単に音声読み上げができるようになっており、画面右上の読み上げボタンでEPUBの音声読み上げを体験できます。かなりアクセシビリティを意識したつくりと言えるでしょう。
 EdgeのEPUB閲覧機能は正直現時点で相当いいところまで到達しているものと思いますので、今後の継続的な改定・機能向上を望みたいところです。個人的には、スクロールモードでの表示はあってよいのではないかと思っています。

(2017.4.3)

6/8 JEPAセミナーでの調査結果を踏まえ、縦中横の挙動に関する部分の表記を修正しました。

(2017.6.9追記)



「Kindle パブリッシングガイドライン 2017.1」更新内容チェック

2017/02/21

Amazon Kindle向けコンテンツ作成の仕様書、「Amazon Kindle パブリッシングガイドライン」が更新されていたようですので、更新部分を含めてリフロー型電子書籍作成に関する部分をざっくりとチェックしました。英語版はこちら。以下、見出しは元文書の見出し項目そのまま、赤字はリジェクトの可能性があるなど特に重要と思われる箇所です。電書協ガイドとの互換性についての考察も入れています。ご一読ください。

“4.1 マーケティング用表紙画像は必須です”

Amazonの商品ページやアファリエイトリンクなどに表示される書影画像(マーケティングカバー画像)についての規定です。最低サイズ2700×1600px以上、解像度300ppi以上、サイズ5MB以下のJPEG画像が必要とあります。また、「価格やその他の一時的な販売促進の提供に言及する」表紙画像は使用できないとの文言があり、例えばオビに価格やキャンペーン情報を書いてあるケースに注意が必要そうです。

“4.2 内部コンテンツ表紙画像は必須です”

電子書籍の中に入れるカバー画像についての規定です。サイズに関してはここには特に指定はありません。なお、表紙画像のOPFでの指定方法に関しての記述がありますが、現状ではもう電書協ガイド準拠で大丈夫な模様です。過去には表紙画像が2回表示されたりしていました(Kindle側がEPUB3の標準的な記述に対応したために直ったと思われます)。

“5 ナビゲーションのガイドライン”

「すべての Kindle 本には、論理目次を含める必要があります」との記述があります。入っていないとリジェクトされる可能性があると捉えるべきでしょう。まあこれは電書協ガイドに最低限の論理目次は最初から入っていますので、それに沿ってデータを作っていれば問題はないです。

“5.1 HTML 目次のガイドライン”

コンテンツ内に通常のページとして表示される目次ページについての規定です。<table>タグを使ってのレイアウトはするな、元の本のページ番号は記述するなというような内容です。これはまあごく常識的と思います。

“5.2.1 toc nav 要素を使用して論理目次を作成する”

toc nav 要素を使用した論理目次の記述方法についてのガイダンスです。電書協ガイド含むEPUB3での一般的な論理目次はこのtoc navを使って作ることになっています。なお、リストのネストによる目次の階層表示のサンプルが載っていますが、これは以前チェックした時点では正常に表示できないRSが多数ありましたので、Kindle以外のストアでも販売することを前提としたEPUB3の中で使うのであれば、対象ストアのRSでの事前表示チェックは必要になるでしょう。

“5.2.2 NCX を使用して論理目次を作成する”

EPUB2の仕様であったNCX文書での論理目次の記述方法についてのガイダンスです。以前はKindleではこちらの方法で記述しないと論理目次が表示されませんでしたが、現在ではtoc nav 要素の記述だけで問題ありません。

“5.3 ガイド アイテム”

目次とは別に、コンテンツ内の論理的な構造を規定するためのガイドの記述方法です。Kindle内の目次(論理目次)に表示される「表紙」「目次」「最初のページ」などのリンクページ指定と思ってください。
今回新しく「読み始め開始位置は定義する必要なし」との記述が加わっています。また、以前にはあった読み始め開始位置の指定方法の項目が消えている模様です。おそらく以前にちょっと話題になっていたKindle Unlimitedでの読み始め開始位置を後ろに持って行き、読まれたとKindleに認識させることでKENPCを稼ぐ(アメリカでの)Kindle Unlimitedの悪質ハック対策としての対応でしょう。
つまり制作側での「最初のページ」指定の有無にかかわらず、販売時のAmazonサーバ側の処理で自動的に「最初のページ」の部分が決定されるようになったと思ってよいと思います。販売前に端末にサイドロードしてのチェックと表示結果が変わってくるケースもありそうですので、注意が必要です。

“6.3 スクリプトを避ける”

Javascript非対応。元ソースに含まれていても自動で削除されるとのこと。

“6.4 ファイル参照は、ソースのスペルと大文字と小文字の区別を一致させる”

大文字・小文字を区別するので注意との記述。ハマったことが一度あります。

“6.6 サポートされる文字とスペースの使用”

サポートされているスペースは、通常のスペース、改行なしスペース (&nbsp;)、ゼロ幅の非結合子 (&zwnj;)です」という記述があります。英語コンテンツなどで使われることのある4分スペースなどは保証外なので注意が必要そうです。
また、「問題を起こす可能性があるため、Unicode 形式の文字は使用しないでください。」という一見意味のわからない記述があります
直前に「文字を書き表すときは、プレーンテキストの UTF-8 の文字を使用します」との記述もあるわけなのですが、Unicodeは本来符号化文字集合の国際規格で、UTF-8はUnicodeをコンピュータで使うための符号化方式のひとつですので、文字通りに取ると使える文字がひとつもなくなります。誤訳を疑って原文も見てみたのですが、「Do NOT use Unicode format characters, as they may cause problems.」とあり、原文の時点で意味が通りません。
おそらくここで「Unicode」と呼んでいるのはWindowsのメモ帳などで保存する際に出てくる(MSの呼称としての)「Unicode」形式の話ではないかと思います。つまり実際に指しているのはUTF-16エンコーディング非対応ということでしょう。となるとEPUB3は仕様上UTF-16も文字コードとして認めているようなので、AmazonとしてはUTF-8のみを用いるということで話はわからなくもないです。ただ、これは技術仕様文書なので技術用語は正確に扱って欲しいです。ちょっとこれを思い出してしまいました。

“6.7 電子書籍での読みやすさを重視する」を追加”

見出しの意味がちょっとわからないのですが(混入しているカギ括弧もママ)、原文は「6.7 Design for a Good eBook Experience」なので、まあ電子書籍制作の一般的注意として、原本のレイアウト再現にこだわりすぎるなという文言かと思います。レイアウトにこだわってフィックスで出すのではなくてリフローで出しましょう、と。

“7 外部リンクのガイドライン”

外部Webページへのリンクに関する規定です。「性的コンテンツへのリンク」「顧客情報の入力を要求する Web フォームへのリンク」「違法、有害、不正、不快なコンテンツへのリンク」はまあわかります。注意すべきは「Amazon 以外の電子書籍ストアへのリンク」でしょうか。これに引っかかるとリジェクトの対象になります。

“8.1 Kindle 本のテスト”

出版前の品質チェック方法に関しての記述です。まあ特に問題はないんですが、iOS版のKindleアプリでのチェックには.azk形式に変換してからiTunesで同期しないとダメ、みたいな話は書いておいて欲しいです。

“9.3.1 本文では必ずデフォルトを使用する”

リフロー型書籍の本文全体に対して文字サイズ(font-size)や行高(line-height)、文字色(color)は指定するなという規定です。部分的にはもちろんOKです。本文全体に対する地色(background-color)の指定もNG。まあこれはKindleに限らずダメですが。
要注意なのは、この規約に沿っていなかった場合、アップロード時にサーバ側で強制変換されるとの記述が追加されていることです。サイドロードしての表示チェックではOKだったものが、実際に販売されると内容が変わってしまう可能性があるため、注意が必要そうです。以下該当部分をそのまま引用します。

  • コンテンツの大部分に使用されているフォントサイズは 1em に正規化されます。
  • コンテンツの大部分に使用されている font-family はルートタグ (本文) に変更されます。
  • 本文に使用されている強制フォントカラーが削除され、テキストの色を変更できるようになります。
“9.3.3 大半の要素に固定値を使用しない”

ピクセル数指定などの相対値で値を記述せよとの規定です。Webサイトと同じ感覚で電子書籍を作るとハマりかねない落とし穴ですので注意は必要ですが、一般的な話です。なお、「改ページを確実にするために、Kindle ソフトウェアでは 1.2 em または 120% 以下の line-height 値の使用はお勧めしません。」との記述があり、ここは注意が必要そうです。

“9.3.7 埋め込みフォントを使用する”

埋め込みフォントの使用規定です。対応形式としてOpenType (OTF) およびTrueType (TTF) の形式が挙げられています。ただ、埋め込みフォントに関しては以前にOTFを埋め込んで作成したコンテンツが、販売時にはサーバ側処理でフォントが削除されて表示されていなかったという経験があり、現在まだ調査中です。日本語フォントはTrueTypeのみという話なのかも知れません。その場合、EPUB3の仕様での標準Core Media TypeにTrueTypeは含まれていないとの話(参考)もあり、いろいろと問題が出てくる可能性が捨てきれません。
また、等幅フォントのサポートについての記述があります。<pre>、<code>、<samp>、<kbd>、<tt>、<font face="courier">、<font face="monospace">のタグで記述すれば等幅で表示するとのこと。コンピュータ技術書などでは必要になりそうです。

“9.3.10 脚注のガイドライン”

脚注の相互リンクが推奨から要件に変わっています。これは影響が大きそうです。電子書籍では確かに現状リンクを貼らないと注が参照しにくいのですが、全ての本での対応となると工数がかなり増えそうな点が心配です。また、Kindle専用端末での脚注ポップアップ仕様は以前にテストした際にはだいぶ不安定でしたので、ちゃんとepubの標準仕様に沿った形で仕様改訂して欲しいところです。

“9.4.1 サポートされている入力形式を使用する”

対応画像形式についての規定です。、「GIF、BMP、JPEG、不透過 PNG、SVG 画像」とあります。透過PNGに相変わらず非対応なのは残念ですが、SVGに対応を公式に謳っているのですね。
なお、注記に「画像ファイルのカラープロファイルには RGB を指定してください。 Kindle は sRGB と CMYK をサポートしていません。」との表記があります。「sRGBをサポートしない」という文言はだいぶ意味がわかりません。CMYKカラーモデル非サポートの話とRGBカラーモデル内規格であるsRGBの対応の話を併記されても困ります。RGB色空間に関する規格にはsRGBの他にAdobeRGBがありますが、これはカメラマンが撮影した画像をきっちりカラーキャリブレーションを取ったモニタ環境で色補正する際などに使うもので、この場合に出てくる話とも思えません。タブレットやスマートフォンなど一般的な機器向けのコンテンツなら画像のカラーは通常sRGBになるはず。
詳しい方に確認を取った感じでは「カラープロファイル指定に非対応なので付けられてもそのままパススルーで出力するよ」くらいの意味だろうという話なのですが、それであればそういう表記が欲しいところです。

“9.4.2 画像のサイズおよび品質の基準”

画像のサイズに関しての規定です。なおここはリフロー型電子書籍内の画像に関しての記述なので、hon.jpのこの記事は誤報です。通常写真集はフィックス型で作ると考えられますので。どうも元記事内に「写真集」という記述も見当たらないようで、どこから出てきたのか謎です。あとこれはそもそもKDPのガイドラインではなくて、KDP以外の出版社からのコンテンツにも影響が及ぶ「Amazon Kindle パブリッシング・ガイドライン」の改訂ですしね。元記事にはしっかり “Amazon Kindle Publishing Guidelines” の表記があります。
肝心の画像サイズに関しては、全ページに表示する場合で「300 ppi で 1200 x 1800 ピクセル以上」との記述があり、この数値自体にそう無理はないと思います。ただ、「9.4.5 写真は高解像度の端末用に最適化する」に「端末の画面いっぱいに表示する画像ならば、画像の幅を 3,200 ピクセル (最高解像度の端末である Kindle Fire HDX 8.9" の画面幅の 2 倍) にします。」との記述があり、これは相当な高解像度です。素直にこれに従って作ってしまいますと、Appleのガイドライン文書、iBooks Asset Guide「画像のサイズは400万画素以下」という規約を簡単に超過し、iBookStoreでは販売できないEPUBが出来上がりそうです。注意が必要でしょう。上記の数値はあくまでAmazonの推奨に過ぎないので、現実的には現状では長辺2000px程度に止めた方が良いと思います。

“9.4.3 レスポンシブ レイアウトの画像サイズ”

「width スタイル属性でパーセンテージの値を使用して、ブロック画像とフロート画像をスタイル化することをお勧めします。 これにより、端末の解像度に関係なく、画像が画面の大きさに対して同じパーセンテージで表示されます。」との文言があります。こちらでテストした限りでは、現状まだKindle iOS版ではサイズの%指定が効きません。仕様として推奨するのであれば、RSの改訂もそれに準じて進めて欲しいところです。

“9.5.1 大きな表を避ける”

「表形式のコンテンツには、表を画像として表示するのではなく、HTML の <table> レイアウトを使用することをお勧めします」との文言があります。アクセシビリティの観点からテキスト検索できる形で表を挿入すべきという話はわかりますが、iOS版Kindleでセル幅の%指定が効かないという問題が現状ありますので、そこは直して欲しいところです。
また、「すべてのサイズの端末に最適となるように、表の大きさを 100 行 x10 列以内にすることをお勧めします。」との文言もあるのですが、元データにある列の数を勝手に弄れるなら苦労はありません。

“9.5.3 必要に応じて表を分割する”

画像としての表を分割する場合のガイドラインです。ヘッダを両方の表につけるようにという記述があります。ちょっと手間はかかりそうです。

“9.5.4 タイプセッティングの改善による表機能”

これはKindle専用端末のアップデート 5.8.2で追加された「タイプセッティングの改善」機能に準じてのテーブル作成ガイドライン文書のようです。<thead><tbody><tfoot>タグで論理構造をしっかり書くようにとの記述があります。この機能はまだちゃんと試していないのですが、iBooksでのテーブル組みの表ポップアップ表示的な機能かと思います。

リフローに関してはこんなところかなと思います。正直、制作仕様の規定文書としては粗い記述が目立ち、またこちらで推奨されている方法でコンテンツを作成してもRS側の実装が追いついていないためにレイアウト等が乱れるケースが出てきそうです。十分な注意は必要でしょう。

(2017.2.21)



プロフィール
Jun Tajima

こちらにて、電子書籍&Web制作を担当しています。
このブログは、EPUB3をはじめとした電子書籍制作担当オペレータからの、「電子書籍の制作時にたとえばこんな問題が出てきていますよ」的な「現地レポート」です。少しでも早い段階で快適な電子書籍閲覧・制作環境が整うことを願って、現場からの声を発信していこうと目論んでおります。

当ブログ内の記事・資料は、私の所属しております組織の許諾を得て掲載していますが、内容は私個人の見解に基づくものであり、所属する組織の見解を代表するものではありません。また、本ブログの情報・ツールを利用したことにより、直接的あるいは間接的に損害や債務が発生した場合でも、私および私の所属する組織は一切の責任を負いかねます。