電書ラボにて「電書ラボ制作仕様見出しテンプレート」が公開されました
電書ラボのこちらのページにて、私も制作に協力した「電書ラボ制作仕様見出しテンプレート」が正式公開されました。
第一義的には「発注者が制作者に対して指示を入れるためのもの」
「電書ラボ制作仕様見出しテンプレート」は、リンク先の説明にもあるように、まず第一義的には発注者が見出しのスタイルを目視で確認しながら制作者に対して指示を入れるためのものとして作られたものです。
従来、紙の本の制作は、編集者がコンセプトや大まかなレイアウトを決め、それを製作者に伝達して製作を行うという形で進められてきました。ですが現状電子書籍の製作では、この形を引き継ぐことが必ずしもできてはいません。
これは現状のCSSの表現能力と紙のDTPのそれとの差といった側面もあるかとは思うのですが、発注者にとってわかりやすい指定方法が提供されてこなかったということにも一因があるのではないかと思っています。
「電書ラボ制作仕様見出しテンプレート」は、そういった点を踏まえ、発注者に必ずしもCSSについての知識がなくても意図したレイアウトの大まかな内容を製作者に伝達できるようにと考え、提供することとしたものです。
副次的には論理的なEPUBデータの作成を補助、促進
また、副次的には、より論理的(セマンティック)なEPUBデータの作成を補助、促進する意味もあるかと思っております。
ストアで販売されている電子書籍のソースコードを確認することはもちろんできませんので、はっきりとしたことはもちろんわからないのですが、現状おそらく相当数、以下のようなタグ付けが行われたリフローの電子書籍が存在しているのではないかと思われます。
<p><span class="bold"><span class="gfont"><span class="font-150per">見出しテキスト入る</span></span></span></p>
<p> 本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト</p>
見出しに当たる部分を本文と同じ<p>タグでコーディングし、<span>タグで多重に囲って装飾指定を入れれば、確かに見た目としては「見出し」にはなりますが、例えばストア側が中身の見出しタグのテキストを自動抽出してそれぞれの本の概要を簡易表示させようとしても、これではどの部分が見出しでどの部分が本文なのかを機械判別できません。結果としてこういった形でコーディングされた電子書籍は、概要がよくわからず、「買ってみないとわからない」状態になりそうです。
また、制作時の修正作業にしても、例えば見出し文字サイズを150%から140%にする必要が生じた場合に、見出しが100箇所あれば100箇所すべてを修正する必要が生じてしまいます。当然修正ミスも出るでしょう。
困ったことに上記のような状態でも「電書協ガイド準拠」に違いないため、相当数が出回っていそうです。
本来これは、以下のような形でコーディングをするべきです。
<h3 class="naka-midashi">見出しテキスト入る</h3>
<p> 本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト</p>
CSSファイルに以下のように指定
.hltr h3.naka-midashi {
font-weight: bold;
font-family: sans-serif-ja, sans-serif;
font-size: 150%;
}
この形であれば修正はごく簡単で、CSSのfont-sizeの値を修正すれば、見出しが何カ所あろうが全て一括で指定変更が反映されます。見出しをh3タグでコーディングしていますので、マシンリーダブルなデータにもなっています。
このあたりはWebの方から見ればごくごく初歩的な話かと思うのですが、紙印刷用のDTPのデータを元にした電子書籍の制作は、必ずしも論理性を考えずに作られたデータを、ごく短期間に「現物合わせ」で変換していく作業であるため、最初からデジタルネイティブで作られるデータほどきちんと論理的に作ることはそもそも現実的な理由で無理です。実際、電書協ガイドはそれを念頭に置いて作られたフォーマットだと思っています。
ただ、せめて見出しをhnタグでコーディングする程度の最低限の論理性は付加しておきませんと、後々の修正で制作者自身も大きな苦労を背負い込むことになるかとは思います。
「電書ラボ制作仕様見出しテンプレート」を用いることで、比較的現場に負荷をかけずにそれは実現可能かと思っており、ご活用いただければ幸いです。ご意見、ご要望などお待ちしております。
(2016.3.1)