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JLREQとCSS(9)

2018/02/28

 こちらのエントリは、JAGAT XMLパブリッシング準研究会で今期の研究テーマとして、W3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)と、これに関連してVivliostyleの村上真雄さんたちが提出したW3Cメンバーサブミッション「Web技術を用いた日本語組版の現状」を取り扱っていることに伴い、会員以外の方の意見を広く求めるとともに、記録を残しておく目的で議事録をベースに補足したものを公開するものです。

 間違い、補足などございましたらご意見いただければ幸いです。なお、当ブログはコメント許可制を取っているため、反映に時間がかかります。あらかじめご理解ください。
 方針としましてはW3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)を先頭から読んでいき、各要素に対応するCSSが存在するのか、存在するとして実用段階なのか、InDesignなどの組版ソフトではどういった形で機能を実現しているのか(いないのか)、などについて見ています。なお全体に対しての包括的な説明の部分に関しては、細かな部分は次回以降にその部分の説明が出てきた時に掘り下げる、としてスルーしている箇所があります。

 なお、こちらで取り上げております各CSSプロパティはまだドラフト仕様の段階のものも多いため、今現在すぐに使えるものばかりではありません。Webブラウザで使用出来るかどうかはこちらなどでご確認ください。また、電子書籍のRSで使用出来るかどうかは、現在広範に調査した資料がありません。いずれ当研究会の活動として調査を行いたく考えていますが、しばらく時間はかかるかと思います。

JLREQ 4.2.1 注の種類

 以下の種類があると記述されている。

  1. 後注(こうちゅう):「縦組でも横組でも利用される形式で,段落の後ろ,項・節・章の後ろ又は本全体の本文の後ろに掲げる注」
  2. 頭注(縦組):「縦組において,基本版面の天側に掲げられる注」
  3. 脚注(横組):「脚注は,基本版面の地側に掲げられる注」
  4. 脚注(縦組):「縦組の脚注は,基本版面の設計段階であらかじめ注のための領域を基本版面の地側に確保し,そこに配置していく.頭注の形式に似ているが,注の配置位置を下部にした形式」
  5. 傍注(縦組):「縦組において,見開きを単位として,その範囲にある項目に関連した注を,見開きの左ページ(奇数ページ)の小口側に掲げる注
  6. 傍注(横組):「横組おける傍注は,サイドノートとよばれており,基本版面の設計段階であらかじめ注のための領域を小口側に確保し,ページを単位として,その範囲にある項目に関連した注をそこに配置していく」

※「縦組の傍注の使用例は少ないが,本文の流れを阻害しないで,かつ,関連項目の近くに注を掲げることができるので,もっと利用が増えてもよい形式である.」という文言があるが、執筆者の好みに過ぎず、自動処理的なハードルの高さからもこの文言を規格に入れるのはどうなのかという意見があった。
※「横組おける傍注」→「横組における傍注」と思う。まあ些末だけども。

 このほか、「上記に掲げた注の形式以外に,学習参考書や歴史の教科書などで人物や事項の簡単な説明,古典の現代文への翻訳などを行間に配置する例がある.」という記述もある。これは組版処理としては両側ルビ的な話になるだろうか。

JLREQ 4.2.2 注の番号

 「注は,本文の該当箇所との関連を示さないで,そのページにある項目に関連した注を配置する例もある.しかし,多くは本文の該当箇所との関連を示す注の番号を付け,関連を示す方法をとっている.」
 さまざまな注の番号の付け方を例示。

JLREQ 4.2.3 合印の処理

「1.文字サイズは,6ポイントくらいとする.」とあるが、本文のサイズが書かれていないのに合印のサイズだけが絶対値で出てきていてちょっと違和感がある。合印の本文に対しての相対サイズを書くべきなのではとの指摘があった。
 なお、電子書籍での注は現在、本文中の合印と段落末等に配置した注の説明文との間に相互リンクを貼って処理することが多い。この際にスマートフォン等での操作の都合上、合印のリンク面積を一定量確保する必要があり、必ずしも底本の体裁をそのまま保てない。今後の課題のひとつである。

JLREQ 4.2.4 縦組又は横組の後注処理

 「2.字下げは,基本版面の文字サイズの2倍くらいにする.後注の行長は,後注の文字サイズの整数倍にする.」という記述があるが、これは仕事として組版処理に従事していない規格策定者向けの文書の説明としてはだいぶわかりにくいのではないかと思う。補足はされているもののここだけいきなり組版者向けの業務指示的になってしまっている。もう少しかみ砕いた方がよいのではないか。

JLREQ 4.2.5 横組の脚注処理

 「多段組の場合,各段ごとに段の領域に脚注は配置する(図251 ).しかし,合印があるページの下端に全段を通して配置する方法も行われている(図252).」
 図252の方がよく見る感がある。組版自動処理の技術的難易度としては段抜きになっている分図252の方が難しそう。

JLREQ 4.2.6 縦組の傍注処理

  1. 「縦組の傍注は,その見開き内に付いている合印に対応する注を,奇数ページの左端にそろえて配置する.多段組では最下段の左端にそろえて配置する.」
  2. 「注の分量が多い場合は,偶数ページにはみ出してよい.多段組の場合は,上の段にはみ出してよい.」
  3. 「対応する傍注の全部又は一部が入りきらない場合には,入りきらない傍注部分を,直後の見開きにおける奇数ページ又は奇数ページの最下段に,次の見開きの合印に対応する傍注の前に挿入する.」

 などなど、Web等での自動組版処理を前提にした際、相当にハードルの高い処理のように思われる。技術的手段の記録としてはよいが、今後Webなどで規格やビューア実装の要望を出していく際にこれをこのまま持って行くのは難しそうと思う。ページ固定で手作業での調整が前提になっている部分が多い。

JLREQ 4.2.7 頭注(縦組)・脚注(縦組)・傍注(横組)の処理

 注の番号を付ける方法、記号などで示す方法、そのページ又は見開きにある項目に関係する並列注を掲げるが本文との対応を示さない方法など、様々な注と本文との対応を示す方法の例示。
※技術書などでは本文のエリアを削って注を入れるようなケースもあるという指摘があった。
※注の中だけ組方向が変わるパターンがあるのではないかという指摘があった。索引などでは逆丁はよく見る。

CSS:注
CSS Generated Content for Paged Media Moduleの中で規格化が検討されている。画面内にfootnoteのエリアを自動定義して生成し、表示するような形。

脚注の指定は例えば以下のような形。

このように指定すると、本文内の<span class="footnote">〜</span>で囲まれた範囲内のテキストを脚注として表示してくれるようになるはず。

自動生成される注の表示記号に関しては、CSS Generated Content for Paged Media Module 2.5 footnote counterで、詳細に定義できるようにすることが検討されている。
footnote-callは本文の中で注を入れるための合印の場所を定義するための疑似要素。
footnote-markerは同じく注の側に付けるための疑似要素。
将来的には傍注や段で分かれるタイプの注(JLREQ 図251参照)、複数の種類の注も使えるようになる予定。(参考

2.8. Rendering footnotes and footnote policyは注の配置位置に関しての定義。
autoだと注が本文の該当項目の下に収まらない場合は成り行きで次ページに配置しようとする。
lineだと本文の側をその行で改ページさせて必ず本文と注を同じページに収めようとする。
blockだとlineと似ているが、段落単位で移動させる。
なお横組の脚注などは、float:left/float:rightで現状でもレイアウト的に似たようなことはできる。

JLREQ 4.3.1 図版配置の指定方法

 図版配置の2つの方針についての記述。

  1. 「あらかじめ本文のテキストについて指定の文字サイズ,字詰めや行間で組版し,文字の配置領域のサイズを分かるようにしておき,それを利用して,ページごとにレイアウトを行い,図版を配置する具体的なページと,そのページ内での詳細な配置位置を指定する方法.」
  2. 「図版と本文のテキストとの対応を指示し,ページ内での図版配置位置は原則のみを指定する方法.」

 1はDTPでの組版作業が必須な雑誌的なレイアウトのものか。2は読み物などでの流し込み。Web等での自動組版処理の場合は基本的に2に準じることになる。

JLREQ 4.3.2 図版配置の基本的な考え方

 図版の配置位置の指針。
 「図版と本文のテキストとの対応を指示し,ページ内での図版配置位置は原則のみを指定する場合,本文のテキストの説明と図版配置位置との関係は,同一ページのできるだけ近い位置が望ましい.」
 現状電子書籍では図版の配置位置をページ内のテキストの行数を勘案して前後にずらすような実装は望めないため、画像のサイズによって盛大に余白が生じたりする。特に縦組みで目立つ。将来的に自動で余白領域に連続するテキストを流し入れるような処理を望みたい。

JLREQ 4.3.3 縦組における図版配置の条件

 「本文のテキストを図版の周囲に配置する場合で,その配置領域の字詰め方向の長さが極端に短い場合(例えば基本版面で指定する1行の行長の1/4又は9字以下の場合)は,本文のテキストは配置しないで,空けておいた方がよい」
 これを自動処理でやるのは相当に負荷が高そう。常に表示文字数をカウントして表示を切り替えるような話になる。

4.3.4 横組における図版配置の条件

 段落間に図版を置く場合の画像前後のアキに関する記述がここには見当たらず、JLREQ 4.5.3 行送り方向の領域の調整処理に簡単な記述があった(図312)。こういうのはJLREQ内での内部参照リンクが欲しいところ。

 なおJLREQ 4.5.3は、箇条書きの項目立てが親項目と子項目の見かけがほとんど同じで、インデント等ではっきりわかる形にもなっていないため大変わかりにくい。修正を望みたい。

CSS:図の回り込み
CSS Page Floatsで規格化が進行中。

3.1. The float-reference property
float referenceでどこを基準としてfloatさせるかを選ぶ形に。今のfloatの挙動と同じなのがinline。加えて段落、ページなども選べるようになるはず。
3.2. The float property
これで top | bottom などを指定することでページ内上部、下部などの指定もできるように。top righttop leftなどの指定も検討されている。
なお現状のfloatの挙動は inline-startinline-end に相当する。

JLREQ 4.4.1 表の構成

 「表は,こま(小間,セル)内に数字や事項などを配置し,そのこまを縦及び横の列又は行として配置,一覧できるようにしたものである.」
 表は項目のセルだけ組み方向が変わったり、ページまたぎの要素があったりとかなり複雑な処理を必要とする組版処理である。InDesignでもページをまたぐ大きな表の作成では手動でセルを分割して調整をする必要があり、自動で流し込んで終わりというわけにはいかない。当然電子書籍でのTableタグを用いた表組みもビューアの側の対応が追いついていないケースはあり、また項目の数が多い表を画面サイズの小さなデバイスで表示する際などはどうしても表示が破綻してしまうケースはある。
 図293 見開きを単位として配置した表の例には、見開きの図表の場合にノドをまたいでキャプションが入る例が紹介されている。こちらなどは自動組版処理での対応は相当以上に難しいと考えざるを得ない。

CSS:表が複数ページになった場合にページ先頭にヘッダーを繰り返し表示する処理
CSS Repeated Headers and Footersで一応提案はされているが、まだドラフトにもなっていない。細かな挙動の制御ができることを目指している。
最低限の繰り返しの挙動の定義はこちら。ここまではドラフトになっている。
表の外側の罫線を分割した双方のページに表示させるかさせないかの制御はCSS Fragmentation Module Level 3のbox-decoration-breakで指定。

JLREQ 4.5.1 ルビなどが付いた場合の行間の処理

 「次のような例では,文字の大きさなどにより行間にはみ出して配置する場合がある.」とあり、例の中に「5.段落で指定された文字サイズより大きいサイズの文字列」の記述がある(図301)。この本文の文字のサイズに従って行間(line-heightの値)を固定する処理が現状Webや電子書籍ではできない。いくつかドラフトでの提案は行われている模様。
 「行間に配置する次のa~cを版面又は段の領域の先頭行に配置する場合は,先頭行に接する版面又は段の領域の外側に配置する」
 ここは現状Webや電書では難しい処理(Webのページレイアウトののボックスモデルの例外になるため)。ぶら下がりなども同様の理由で難しい。

 JLREQはこの後の部分は資料となるので、本文に当たるパートは今回で一応全て読み終えたことになる。次回以降、要望の優先順位の検討や電子書籍用RSの対応をチェックしていく予定。

(2018.3.2)

JLREQとCSS(8)

2018/01/02

 こちらのエントリは、JAGAT XMLパブリッシング準研究会で今期の研究テーマとして、W3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)と、これに関連してVivliostyleの村上真雄さんたちが提出したW3Cメンバーサブミッション「Web技術を用いた日本語組版の現状」を取り扱っていることに伴い、会員以外の方の意見を広く求めるとともに、記録を残しておく目的で議事録をベースに補足したものを公開するものです。

 間違い、補足などございましたらご意見いただければ幸いです。なお、当ブログはコメント許可制を取っているため、反映に時間がかかります。あらかじめご理解ください。
 方針としましてはW3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)を先頭から読んでいき、各要素に対応するCSSが存在するのか、存在するとして実用段階なのか、InDesignなどの組版ソフトではどういった形で機能を実現しているのか(いないのか)、などについて見ています。なお全体に対しての包括的な説明の部分に関しては、細かな部分は次回以降にその部分の説明が出てきた時に掘り下げる、としてスルーしている箇所があります。

 なお、こちらで取り上げております各CSSプロパティはまだドラフト仕様の段階のものも多いため、今現在すぐに使えるものばかりではありません。Webブラウザで使用出来るかどうかはこちらなどでご確認ください。また、電子書籍のRSで使用出来るかどうかは、現在広範に調査した資料がありません。いずれ当研究会の活動として調査を行いたく考えていますが、しばらく時間はかかるかと思います。

JLREQ 4.1.1 見出しの種類

 「見出しは,組版処理の方法で分けると,次の4つになる.
 a.中扉又は半扉
 b.別行見出し
 c.同行見出し
 d.窓見出し」
※同行見出しで見出しと本文との間がJLREQでは「全角」とあるが(図188)、必ずしも全角とは限らないのではないかという指摘があった。活版の時代のルールと思われる。

JLREQ 4.1.2 別行見出しの構成

 「別行見出しの構成については,JIS X 4051では大見出し,中見出し及び小見出しについて,それぞれラベル名,番号,見出し文字列及び副題で構成するとしている(図190).ただし,ラベル名,番号及び副題は,必須要素ではなく,省略してもよいとなっている.」
「なお,これ以外に見出しの前後に記号を付ける,あるいは罫線を見出しの前後に配置する,罫線で見出しを囲むなどといったことも行われている」
※このあたりの記述はデザインの話が入り込んでしまっており、規格文書の記述としてはいらないのではないかという指摘があった。

JLREQ 4.1.3 見出しにアクセントを付ける

 ここもほぼデザインの話。技術的にそう多くのオプションがなかった活版時代のデザインの典型例としては興味深いものがあるが、デザイン回りの話だけに異論も多く出そう。

JLREQ 4.1.4 改丁・改ページ・改段処理

 「大見出しなどでは,区切りを明確にするために新しいページから始める方法も行われている.」
 章扉などで見られるような必ず奇数ページから始める処理が改丁、奇数偶数ページにこだわらず、単にページを改めるのが改ページ。雑誌やムック本などで見られるように必ず偶数ページで始めて見開きで記事を読ませるパターンもある。

CSS:扉などの改ページ
CSS Fragmentation module Level3 3.1. Breaks Between Boxes: the break-before and break-after properties
break-after:autobreak-bofore:autoで通常の改ページ。
いわゆる改丁や見開き始まり指定はright/leftでできるようになるはず。
recto/versoは論理値なのでこれが使えれば縦書き横書き共通で改丁などを指定できる。
見開きの最初のページにするのがverso

 なお現状EPUB3では改丁/見開き始まりはOPFファイル内のspine項目で「properties=”page-spread-left”」のように指定する。ただしこれに対応しているEPUBビューアは現状あまりない(観測範囲ではhonto、kinoppyくらい。BOOK☆WALKERも対応しているという報告があった)。全体としてはリフロー型で、中途に見開きの図が挟まるような本で問題となりがち。

JLREQ 4.1.6 行取りの処理例

 「各ページで行を配置していく場合,基本版面で設定した行位置にそろった方が望ましい.そこで,行送り方向の見出しの占める領域は,基本版面で設定した行位置を基準にして設定する方法が行われている.このような設定方法を行取りという.」(4.1.3 dより)
 ここは4.1.3 dへの参照リンクが欲しい。

※ページ先頭に行取りの空改行が入った場合、欧文組版では(上側の)スペースを削除するのが普通で、CSSも現状そうなっている。和文の図201などの処理は行頭でも(右側の)アキを入れる点が違う、という指摘があった。

 図203のような本題と副題が2行の場合、泣き別れを防ぐにはbreak-inside:avoidの指定が必要。

 行取り含めて本文級数×行数で版面を決めて厳密にそれを守る日本語組版では基本となる処理を再現するために、現状議論中のCSS規格で一番近いのはLine-gridなどだが、まだこれも議論中でどうなりそうかはっきりしないとのこと。ここがどうにかならないと、行取りをCSSで指定するといったような話にもならないだろうと思われる。

JLREQ 4.1.7 行取り処理した見出しがページ末にきた場合の処理

 行末に入りきれなかった場合にはブロックごと次ページに。これは行取り処理した見出しに限らず、ページ末尾に見出しが来てしまった場合に次ページに送る処理は一般的に行われている(JLREQ 4.1.4 eの「なりゆき」の記述も参照)。
 なお、見出しと本文の泣き別れを防ぐのはbreak-inside:avoidなどを指定することで可能だが、ノド側に来た場合には見出しと本文との泣き別れを許容する(見開きで次ページの1行目に本文が来るため)ルールを採用しているケースもあるため、そこまでを自動で処理するのはかなり難しそうではある。

JLREQ 4.1.9 同行見出しの処理

 同行見出しはレイアウト的に本文と同一行内に見出しを配置するもののため、例えば

 <p><span class="midashi">見出し</span>本文本文本文本文</p>

 といったような形のマークアップが想起されるが、構造化文書として本来的には

 <hn>見出し</hn>
 <p>本文本文本文本文</p>

 といった形で本文と見出しを記述しておき、CSS指定で同行で見せる方が望ましい。

JLREQ 4.1.10 窓見出しの処理

 これも本来は上記のように<hn>タグと<p>タグを分けてマークアップするべきだが、まだRSの実装的に実際にweb等で再現するのは難しいかもしれない。詳しくは以下参照。

CSS:同行見出し/窓見出し
同行見出し、窓見出しもHTMLの構造としてはhnタグでマークアップした方がよいはず。
そのためのものとして display要素の拡張として Run-In Layout がドラフト規格として考案されている。
display: run-in;
のように指定。

CSS display level3ではdisplayプロパティでdisplay-outsidedisplay-insideを別に指定できるようになっているため、窓見出しの表現も可能になるはず。
display: run-in flow-root;
になるか。floatの指定も必要かもしれない。

JLREQ 4.1.11 段抜きの見出しの処理

 新聞や雑誌で多く見られる段組の複数の段をぶち抜く形の見出し。これはリフローで処理するのは相当負荷が大きそう。一応CSSではできなくはない。

CSS:段抜き見出し
CSS Multi-column Layout Modulecolumn-spanで指定できる。ただし、全段抜きか段抜きをしないかの2択。
なお、multi-column module Level2ではinteger(整数値)での指定も提案されてはいるとのこと。これがもし実用段階に入れば、例えば5段組のうち2段を使った段抜き見出しのようなレイアウトも可能になるだろう。
InDesignでは段落パレットの「段抜きと段分割」で指定できる。ただし、段抜きを行うためにはテキストフレームをひとつにしておかないとならないなどの制約はあり、現状どこまで実用されているかはわからない。

次回 JLREQ 4.2 注の処理 から

(2018.1.5)

JLREQとCSS(7)

2017/12/11

 こちらのエントリは、JAGAT XMLパブリッシング準研究会で今期の研究テーマとして、W3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)と、これに関連してVivliostyleの村上真雄さんたちが提出したW3Cメンバーサブミッション「Web技術を用いた日本語組版の現状」を取り扱っていることに伴い、会員以外の方の意見を広く求めるとともに、記録を残しておく目的で議事録をベースに補足したものを公開するものです。

 間違い、補足などございましたらご意見いただければ幸いです。なお、当ブログはコメント許可制を取っているため、反映に時間がかかります。あらかじめご理解ください。
 方針としましてはW3C文書「日本語組版処理の要件」(JLREQ)を先頭から読んでいき、各要素に対応するCSSが存在するのか、存在するとして実用段階なのか、InDesignなどの組版ソフトではどういった形で機能を実現しているのか(いないのか)、などについて見ています。なお全体に対しての包括的な説明の部分に関しては、細かな部分は次回以降にその部分の説明が出てきた時に掘り下げる、としてスルーしている箇所があります。

 なお、こちらで取り上げております各CSSプロパティはまだドラフト仕様の段階のものも多いため、今現在すぐに使えるものばかりではありません。Webブラウザで使用出来るかどうかはこちらなどでご確認ください。また、電子書籍のRSで使用出来るかどうかは、現在広範に調査した資料がありません。いずれ当研究会の活動として調査を行いたく考えていますが、しばらく時間はかかるかと思います。

3.7.2 振分け処理

 「振分けとは,1行の途中に複数の言葉や文を配置する処理である.複数の選択肢を示す場合などに利用されている.学習参考書,マニュアル,解説書などで使用している例がある.振分けを行う場合,複数の行を括弧類でくくることも多い.」この処理自体は見たことがあるが、「振分け」という用語自体にはあまり聞き覚えがなかった。
 「また,同一の振分け行を複数の行に分割した場合の行間は0とする」ここだけずいぶん具体的な行間表記。
 CSS的にはdisplay:inline-blockで表現自体は可能。上下をブレースで囲む表現が今ちょっと難しそうな感じ(border-imageプロパティでできなくはないが)。

3.7.3 字取り処理

 「日本人名の名簿を一覧にする場合など,行中の文字列の一部について全長を指定する例がある.このような場合に,行中の指定された文字列を,字間を調整して,字詰め方向について指定された長さにする処理が字取り処理である.人名など字数の異なる文字列を指定した一定の長さでそろえたい場合に利用できる.」
 「3.5.3 そろえの処理」に関連情報がある。「○○文字分」という考え方になるところが考え方として違うところか。実際に制作の現場には、「○○字取均等割り」といったような形で指定が来る。
※図173と図174は違う処理の例になるのではないか。項を分けた方が良くないかという指摘があった。
CSS的には前出のtext-alignを参照。

3.7.4 等号類と演算記号の処理

 このブロックは数式組版に関する部分であり、JIS X 4051にはない項目になる、とのこと。
※図176の等号類、演算記号の文字の例が全角になっているのに違和感がある、との指摘。プロポーショナルの記号であるべき。(和欧混植で英文ブロックを和文内に入れる場合には欧文ブロックの中は欧文の組版ルールに従うべき、というのと同種の話か)
※図177、演算としてのマイナス符号と負の値を表す符号がこの例だと判別できないという指摘。和文フォントのデザインに表記が引きずられている?
 「別行式で,2行に分割する位置をある程度任意に選択できる場合は,まず等号類の前で2行に分割するとよい.それができない場合は,演算記号の前で2行に分割するとよい.」に関して、数学方面での書籍組版の常識としては、別行式ではJLReqの記述の通りであるが,行中式(インライン)では式が繋がっていることを示すために等号類や演算記号の「後ろ」で改行する、という指摘あり。また、行中式での改行の記述自体が抜けている、という指摘もあった。

3.8.2 詰める処理と空ける処理

 行の調整処理には空き量を詰める処理(追込み処理)と字間を空ける処理(追出し処理)がある。
 「通常,詰める処理(追込み処理)を優先し,それで処理できない場合は空ける処理(追出し処理)を行う.詰める処理(追込み処理)を優先するのは,ベタ組の箇所はできるだけ空けないという考え方による.」書籍組版などでは空ける処理を優先するケースもある。どちらを優先するかはそれぞれの現場でのルール付けによるものと思われる。
 「a.規定されている空き量を詰める処理(追込み処理).追込み処理では,読点類又は終わり括弧類の後ろの二分アキや,始め括弧類の前の二分アキ,欧文間隔などの空き量を規定の範囲内で詰める処理を行う.」とある。
 JLREQの規定では欧文単語間のスペースを3分と規定しているが、実際のフォントのデザインでは0.25em程度にしているパターンが多いため、実際にはほとんど詰まらないことになるのではないか、という指摘。
 現在のDTPの組版では、カタカナ、ひらがな類の前後スペースの調整処理なども行われている。これは技術の進展により、より細かな調整が可能になったためと思う。

 また、この項目の注にぶら下げ組の解説がある。ぶら下げはCSSのボックスモデルの例外的な処理を必要とする要素でもあり、1項立てて解説しても良いのではないかと感じた。ちょっとアンバランスさがある。
 「DTPなどでは,このような句読点を3行目のようにぶら下げ組にする処理を行っている例があるが,不必要な処理といえよう.」
 行末の句読点は全てぶら下げた方が綺麗に揃って見えるという意見もある。これを反映してか、InDesignでは段落パレットの指定でぶら下がりの強制、標準、なしを選べる。

CSS:ぶら下がり
CSS text module Level3 9.2. Hanging Punctuation: the hanging-punctuation property
force-endが強制、allow-endが標準。firstは段落はじめの開き括弧などを通常位置より外側にはみ出させる処理。日本語だとあまり見ないが、欧文ではそれなりに多い。段落先頭だけに関連する点がtext-spacingとは違う。lastはそれを行末側でやる処理。
参照:Text Level4 10.1.3. Japanese Paragraph-start Conventions in CSS
括弧類が段落始めに来た際の字下げ量の区分
今Kindle(だけ)が段落はじめのカギを天付きとして扱うので扱いが面倒くさい。

3.8.3 詰める処理の優先順位

「詰める処理(追込み処理)を行う場合は,通常,優先順位と詰める限界を決めて行う.詰める処理は,次の順序で行う.
a.欧文間隔を,最小で四分アキまで文字サイズ比で均等に詰める.
b.行末に配置する終わり括弧類,読点類及び句点類の後ろの二分アキをベタ組にする.
c.行末に配置する中点類の前及び後ろの四分アキを一緒にベタ組にする.
d.行中の中点類の前後の四分アキを,最小でベタ組まで文字サイズ比で均等に詰める.
e.行中の始め括弧類の前側,並びに終わり括弧類及び読点類の後ろ側の二分アキを,最小でベタ組まで文字サイズ比で均等に詰める.」

 ツメ処理優先順位の記述が断定的過ぎないかという指摘があった。この順番で必ずツメ処理を行う話ではないのではないか。順不同の箇条書きとしてはわかる。
 また、機械的な処理としてはわかるが実際にはもう少し状況によって臨機応変な処理をしているのでは、との話も。
 なお、ここでのツメ処理はJustificationに関連して起こるもので、デザイン上の必要性からくるツメ組の話とは別枠。CSS的にはText-JutifyのJustification Methodに関連する。

3.8.4 空ける処理の優先順位

 ここの項目への指摘も3.8.3と同じ。CSSとしては同じ項目で扱われている。

 次回は JLREQ 4. 見出し・注・図版・表・段落の配置処理から

(2017.12.12)

プロフィール
Jun Tajima

こちらにて、電子書籍&Web制作を担当しています。
このブログは、EPUB3をはじめとした電子書籍制作担当オペレータからの、「電子書籍の制作時にたとえばこんな問題が出てきていますよ」的な「現地レポート」です。少しでも早い段階で快適な電子書籍閲覧・制作環境が整うことを願って、現場からの声を発信していこうと目論んでおります。

当ブログ内の記事・資料は、私の所属しております組織の許諾を得て掲載していますが、内容は私個人の見解に基づくものであり、所属する組織の見解を代表するものではありません。また、本ブログの情報・ツールを利用したことにより、直接的あるいは間接的に損害や債務が発生した場合でも、私および私の所属する組織は一切の責任を負いかねます。